お互いに子どもがありながらの再婚は、迷いが大きいようです。相手の子を愛せるのか、自分の子が傷つかないか…。それでもあえて再婚に踏みきった夫婦がいます。再婚から3年で、ある出来事をきっかけに結束したといいます。
家族なのに信頼し合えない関係だった
「最初にルールはつくったのですが、家族といえども人間関係ですから、ルール通りにはいかないものですよね。3年くらいはみんな遠慮し合ってギクシャクした感じでした」
そう話すのは、ルリさん(38歳、仮名=以下同)です。20代で結婚した彼女は、離婚したとき2歳の娘がいました。3年後の32歳のときに再婚。3歳年上の彼には4歳の息子がいました。
「まず、“相手の子をかわいがる”というルールをつくりました。でも、そこに縛られると相手の子を怒れなくなる。子どもたちも遠慮しているようで、息子は私の顔色をうかがっている。夫は息子が1歳半のときに離婚しているので、息子は“母親”を知りません。夫の母親が大事に育てていたので、祖母を恋しかったりもしたみたい。ときどき祖母にも来てもらいましたが、彼女もよくできた人で『あなたに懐くのがいちばんいいから、私は少し引いているわね』って」
それもあって、最初の2年はギクシャクしてばかり。夫は自分の子どもを外に連れ出して、ルリさんに意地悪をされていないか、探りを入れたりもしていたようです。
前妻は子どもにあまり関心がなかったのか、1歳半の子に手を上げたり食事を与えなかったりしたこともあったので、心配していたようです。
「でも、私にとってはそういうこと自体が不愉快。私を信用していないのかと悩みました。何度も話し合ったけど、『家族になるのはムリなのかも』、『離婚する以外に道はないのか』と苦しくなったこともありました」
それでも話すしかないと覚悟を決めたルリさん、週に1回「家族会議」を開こうと提案しました。
「家族はチーム」何でも話し合う時間を設けた
当時、7歳と6歳になっていた娘と息子も、もちろん家族会議のメンバーです。
「うちは4人のチームなの。何かあれば他の3人が助ける。心配しないで何でも話そうと呼びかけました。すると小学校入学を前にした息子が『学校に行ったら、友だちができるか心配』と言ってくれたんです。すると小学校に通う娘が『大丈夫だよ、誰かにいじめられたらアタシに言って。やっつけてやるから』と強気。夫が笑いながら『頼もしいなあ。でもね、暴力はダメだよ』と娘を諭してくれて」
そうやって毎週、みんなで話すことを習慣づけていったそうです。再婚してから6年、いまも続く「家族会議」では、ときには4人でゲームをしたり、皆で観に行った映画の感想会になったり。
11歳と10歳の子どもたちからの声は、自分たち親の反省にもなるし、若い感性にハッとさせられることも多いそう。「自分の子どもではないけれど、6年、一緒に暮らしてきた息子も本当にかわいい。やんちゃで、ときに本気で怒りますが、彼も私もすぐに忘れてまた仲良しに。娘と夫も同じですね。
「家族会議をやめたい」と言われたら成長の証
とにかく“4人はチーム”なことを忘れないのが大事。そのうち、家族会議なんてやめたいと子どもたちが言い出したら、やめようと夫と話しています。夫は『そんな日がくるのは寂しい』と涙ぐんでいましたけど(笑)。子どもは大人になっていくんだからしかたないですもんね」
小さい子どもがいる再婚相手だからこそ、より濃く接していかなければと最初は頑張りすぎたルリさん。でも「家族をチームととらえたときから、少し肩の力が抜けました」と穏やかな笑顔を見せてくれました。
「ダメかも」と離婚を考えたこと始まって、とにかく皆で話した。「うちは4人のチーム。何かあったら、他の人が助ける」と妻がリーダーシップをとると誓って以降、4人の結束は強くなっていったといいます。ケンカもするけど、4人でいるときがいちばん幸せだそうです。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里