2人目がほしいけれど、子どもはひとりしか育てられないかもしれない。経済状況が苦しい今の時代、そう思っている人は多いようです。2人目問題、実際に今、直面している夫婦もいるのではないでしょうか。

 

「経済的にムリ」と言い張る夫との溝

「いまは残業なしで仕事をしています。共働きといっても、夫も私も中小企業勤め。手当もたいしてないので、ゆとりのある生活ではありません。でも私は、本当は2人目がほしいんです」

 

真剣な表情でそう話すのは、ナミさん(37歳、仮名=以下同)です。5年前に、2歳年上の男性と結婚、現在は4歳の娘との3人暮らしです。保育園に娘を預けて出勤、迎えに行って帰宅、夕飯の支度まで、家事育児はほとんどナミさんのワンオペ状態。夫は帰宅して娘を風呂に入れるくらいしかしていません。

 

「もうひとりいたら、私自身がさらに忙しくなるだけだとは思うんですが、それでも2人目がほしい。子どもってかわいいから。産むなら早くと気持ちも焦っています」

 

夫も決して子どもが嫌いなわけではありません。ただ、仕事が人並み以上に忙しく、早く帰りたくても帰れない状況。週末になれば、子どもにはべったり。家事はあまりしませんが、夫と一緒にいる娘が楽しそうなので、父親としての夫は認めていると笑います。

 

「ひとりだって楽しいんだから、2人いたらもっと楽しいと夫に訴えています。夫は『気持ちはわかるけど、実際、もし2人とも大学まで行くと考えたら経済的な不安がある。ムリだろう…』と言うんです。夫は3人兄弟の真ん中で、兄弟のよさもわかっているはず。でも『子どもが2人いたら、我慢させてしまうのではないか』と夫は考えているようです。2人とも大学は難しく、ひとりは高校を出て働かざるを得なくなったらかわいそうだ、と。それもわかるんですけどね…」

親が「孫の教育費は出すから」と言ってくれるが…

悩んだナミさんは、つい近所に住む自分の両親にグチを言ってしまいました。

 

「本当は2人目がほしいんだよねと両親の前で言ったら、『子どもは宝よ、産んだほうがいい』と母が言うんです。父は『教育費はなんとかするから』って。私には兄がいるんですが、エリートで義姉もバリキャリ系。2人とも高給とりで、子どもはいらないと。だからなのか、両親は私にもうひとり産んでほしいんでしょう」

 

両親にはとくに大きな財産があるわけではありませんが、自分たちがいなくなったらナミさん一家が実家に住んでもいいし、貯蓄は孫のために使いたいと言ってくれたそう。ナミさんはワクワクしながら、それを夫に伝えました。ところが夫は拒否。

 

「それだけは勘弁してほしい。親として情けない、と。子どもの学費くらい自分たちで出してやりたいと言うんですが、夫が恐れているのは、お金を工面してもらうと支配される気がするみたいで。父は気さくで夫のこともかわいがっているつもりですが、夫にしたらちょっと面倒だと思っているはず。しかもこの先、介護の問題も出てきますから、夫の不安や心配もわかるけど」

 

それでも学費のメドがたつなら、2人目をと考えてしまうナミさん。この先、孫の学費をもらうのは気が引けると考える夫。それでもナミさんはなんとか夫を説得したいと考えているそうです。

 

「父は『オレが話してやる』と言っていますが、いまは止めています(笑)。父が押せば押すほど、夫はかえって頑なになりそうで。こうなったら娘に、『弟か妹がほしい』と言わせるしかないかも」

 

幸い、最近、娘は保育園の友だちのきょうだいに興味をもっている様子。そこから話をもっていくしかない、とナミさんは計画を立てています。


文/亀山早苗 イラスト/前山三都里