新刊『じゆうがたび』で、旅を通して自分を見つめ直した経験を綴っているフリーアナウンサーの宇賀なつみさん。旅の醍醐味についてお話を伺いました。(全2回中の2回)
最低限必要な旅行の荷物は3つ
── まもなくGWがやってきますが、ご予定はありますか。
宇賀さん:GWはどこも混むので都内にいる派です。コロナ禍前だと確実に都内は空いていました。東京でホテルステイもいいですし、サウナつきの宿もいいですね。泊まらなくても日帰りで行ける場所に行くのもいいと思います。遠くに行くだけが旅ではないと思っているので、たとえば普段は行けない3駅隣のご飯屋さんに行くとか、多くの人が移動する時期はゆったり過ごしたいと思っています。
── 国内外問わず、旅行に行かれている宇賀さんが必ず持って行くものはなんでしょう。
宇賀さん:国内ならば財布、スマホ、家の鍵だけでいいと思っています。本当に必要なものってあんまりないんです。あまりに身軽すぎて、チェックインの際に宿の方に「え、これだけ?」という表情をされるときもあります(笑)。
── 少なすぎて驚きました。
宇賀さん:「よし!行くぞ!」という気合いを入れた準備はしないんです。なるべく荷物は持たないようにしています。泊まりの場合は、先ほど話した3つと、スキンケア用品と下着だけは持っていきますが、1泊だけなら洋服も変えないですし、旅行先ではすっぴんでいることも多くて。宿に紙とペンも置いてありますよね。たまにすごく書きやすいペンがあって気に入ることも。
── わかります!ちょっと重みがあって(笑)。
宇賀さん:そうそう(笑)。しっくりくるんですよね。便箋や封筒が置いてある宿では手紙を書くこともあります。
── 旅行のときは、ものすごく荷物が多い人と少ない方に分かれますが、宇賀さんは相当少ないほうですよね。
宇賀さん:あまりたくさん荷物を持って行くと、家に帰ってきたときが大変じゃないですか。せっかく楽しんで帰ってきたのにゲンナリしてしまうので、あまり持っていきません。
携帯は持っていますが、私、実はなくても大丈夫なんです。でも仕事の返信など、周りの人に迷惑をかけるので持っています。何かを調べるときに使うのはいいのですが、便利なものに支配されないようにしようと思って。用もないのにだらだら使わないようにしています。使いすぎないように1日1回しか充電しないようにして、本当に大事なときのために電池残量を取っておいています(笑)。
行き先はこう決める
── 会社員時代もフットワーク軽く、お休みの合間を縫って旅行に行っていたそうですが、海外旅行にはどのくらい行きましたか。
宇賀さん:海外は30か国くらいですね。20歳のときに初めてひとりでLAに行ってから目覚めました。両親にも連れて行ってもらっていましたが、連れて行かれるのと自分で行くのは、だいぶ違いますね。そこから旅好きがスタートしました。
── 目的地はどうやって決めるんでしょう。
宇賀さん:海外の場合はまず気候から調べます。その時期にいちばんいい場所はどこかなって。アジアだったら、雨季や乾季も調べてから。でも、いざ行き先が決まって飛行機のチケットを取ってからはあまり調べません。
インドを訪れたときも「タージマハルを見る」ということだけは決めて、あとはホテルの人などに聞いて、その場で決める感じです。
── 観光をぎゅうぎゅうに詰め込むというより、海外の方がされるようなゆっくりした滞在というイメージですか。
宇賀さん:朝、ジムやプールに行って、ゆったり食事して…。というような欧米の方がするような旅をすることもありますし、「今日は観光するぞ!」と決めて、朝7時には起きて午前中から行動することもあります。その日の気分や気候に合わせて決める感じです。
── 国内旅行の場合はどうですか。
宇賀さん:「温泉に入りたい!」と思い立って目的地を探すときもありますし、温泉といっても透明じゃなく白っぽいお湯に入りたいとか、海が近い場所の塩っぽいのに入りたいとか、そういう探し方をすることもありますね。あとはどうしても行きたい店があって、そこに行くために計画を立てることも。毎週土曜日に関西で仕事があるので、そのあとそのまま出かけることも多いです。
今月からキャリア15年目。フリーランスになって5年目になるので、実は働き方を変えようと思っています。毎月、3週間しっかりと働いたら最終週をお休みして、どこかに行こうかなと思っているんです。1週間あったら、いろんなところに行けますよね。
── 素敵ですね!コロナ禍も4年目で、旅行を始める方も増えました。
宇賀さん:嬉しいですね。旅に出ることで人の優しさに気づけます。私は本当に、行く先々でいろんな方に助けてもらっているんです。一度行ったことがあれば、ニュースで見てもどこか知らないところの話ではなく関心も持てます。出会いが旅の醍醐味です。
旅を通して見えてくるもの
── 新刊『じゆうがたび』では、青森県の「ランプの宿 青荷温泉」にデジタルデトックスの旅に行った話が印象的でした。
宇賀さん:旅の達人的な方がお勧めしていてずっと気になっていた宿だったんです。4日間スケジュールが空いたので、そこで「よし、青森!」って。ちょうど、八甲田山が紅葉を始めたと聞いて、これは行くしかないなと。すごく良かったです。
── どんな宿なんでしょう。
宇賀さん:電気も電波も、コンセントもないんです。夫と一緒に行ったのですが、あらかじめそのことを伝えておいたのに、チェックインしてから「1件電話しなきゃ」と言って夕方に山を降りていました(笑)。これまでにも電波がない宿はいくつか行きましたが、電気がない宿は初めてでした。
夕食はランプの灯りだけで、大広間に宿泊客みんなが集まって食べます。食事も山菜とか素朴なものでした。
本を読もうと思って持っていったのですが、あまりにも暗すぎて読めないんです。昔の人ってこのランプの灯りで本を読んでいたんだと思うと、改めてすごいなって。
夕食の後すぐ寝てしまって夜中に目覚めて温泉に行ったのですが、月明かりがまぶしかった。滞在中、一番明るかったのは月でした。月を眺めながら1時間くらい温泉に浸かって、ものすごくリフレッシュできました。
── 普段、都心にいると月の明るさを意識することってあまりないですね。
宇賀さん:地方に行くたびに月の明るさに気づかされます。何かを遮断すると他のことが見えてくるんですよね。昔は、常にイヤホンをして音楽を聞いていたんですけど、最近は車に乗るときも何にもつけず、エンジンの音を聞いています(笑)。そういえばしっかりエンジンの音をちゃんと聞いたことなかったなと思って。日常で忘れてしまいがちな大事なことも、旅を通して教えてもらっています。
PROFILE 宇賀なつみさん
1986年生まれ。2009年テレビ朝日入社。「報道ステーション」をはじめ情報、バラエティ番組を幅広く担当。2019年に退社し、フリーランスに。テレビ、ラジオを中心に幅広く活躍中。
取材・文/内橋明日香 写真提供/宇賀なつみ