仕事中のお昼休みは、何をしてもいいもの?素朴な疑問を松井剛弁護士に聞きました。他にも、SNSの投稿に関してや懐かしの?退職代行のいまについても、質問してみました。

 

「あの芸能人がお店に来た!」とSNSでつぶやいたら

── 従業員が仕事で知りえた内容をSNSに投稿して問題になったことがありますが、そもそも業務に関わる投稿はどう考えればよいのでしょうか?

 

松井さん:業務上知りえた秘密は口外するべきではありません。秘密保持契約書を締結している場合はその内容に従わなければなりません。

 

── 業務上知りえた“秘密”というと?

 

松井さん:営業秘密・ノウハウ、顧客情報など、漏らすことによって会社に損害を与えうる内容を指します。秘密保持契約書がなくても同様です。口外することによって実際に会社が損害を被った場合、会社は従業員相手に損害賠償を請求できる可能性があります。

 

── 損害を与えうる内容でなければ、情報を個人のSNSに投稿してもよいのでしょうか?たとえば、「私はこの会社に勤務しています」「新商品が発売されました」などは?

 

松井さん:いまあげられた内容は、会社に損害を与えるものではないので問題ありません。また、顧客情報のなかでも「勤務先のレストランに有名人が来店」は、その有名人の同意を得ていればOKです。

 

いっぽうで「勤務先のホテルにAさんとBさんの芸能人カップルがお忍びで宿泊」は、明らかにダメですよね。

休憩時間は何をしても、どこへ行ってもいい?

── では、業務中の休憩時間の扱いについて教えてください。たとえば、昼休みは何をしても、どこへ行ってもよい自由な時間と考えてよいのでしょうか?

 

松井さん:休憩時間は完全に「業務から解放される時間」ですから、昼寝しようが外出しようが個人の自由です。ただ、休憩時間の終了までに業務に臨める状態で戻る必要があるので、例えばスポーツジムに行って仕事に差し障りがあるほど汗だくのまま戻ってくるのは問題がありますね。

 

本来、会社は従業員に6時間勤務なら45分以上、8時間勤務なら1時間以上の休憩を途中に与えなければなりません。昼休みの時間をずらすなど現場での調整は、労使協定次第です。

 

「業務から解放される時間」なので、昼休みに食事をしながら電話番を務めるのは「待機時間」にあたり、「休憩時間」とはみなされません。また、ランチミーティングも業務ですから、別に休憩時間が必要になります。

話題になった“退職代行“のいま

── 業務から解放された休憩時間を確保するのは会社の義務なんですね。最後に、解雇についての質問です。数年前、“退職代行”が話題になりましたが、現在も存在しているのでしょうか?

 

松井さん:はい、私たち弁護士も業務として退職代行は行っています。数年前に話題になったのは、弁護士以外が行う退職代行だと思います。

 

弁護士が行う退職代行は、会社への意思表示や代理人としての交渉です。退職の意思の通知から、離職に関わる書類一式を受け取るなどの対応をします。会社から退職に関連して損害賠償の請求など何らかの請求があれば、その対応もします。

 

── では、弁護士以外が行う退職代行とは?

 

松井さん:純粋に「使者」としての役割です。弁護士のように、代理人として意思表示をしたり勝手に交渉したりはできません。

 

いまも弁護士以外が行う「退職代行」をweb上などで見かけることがあります。費用も2万円程度からと安価ではありますが、法律を遵守したサービスを行っているか、依頼の際には注意が必要です。

 

PROFILE 松井剛さん

弁護士(ベリーベスト法律事務所)。労働問題を得意とし、誠実な人柄と親身でわかりやすい説明に定評がある。依頼者の希望に沿った解決を導くべく日々研鑽を積んでいる。メディア出演多数。

 

取材・文/岡本聡子 ※画像はイメージです