最近、高齢でもバリバリ働く!という方をたくさん目にするようになりました。働き手不足の現代を象徴しているようで尊敬する反面、高齢者になってもそんなに長い間働かなきゃいけないの?と自分の未来にあんたんとすることも。わが家の働く高齢介護ヘルパー、義母はと言うと…。
キラキラ働く高齢介護ヘルパーだった義母
わが家の義母は、事務系会社員として働いていた仕事を定年退職してから、一念発起して介護ヘルパーの資格を取り、それからずっと派遣介護ヘルパーとして働いてきました。近所の介護を必要とする方のお宅に行って1時間から2時間ほど、掃除や調理などの家事援助をするのが主な仕事です。
実働時間は短いとはいえ、曜日ごとに違う何軒ものお宅に、雨の日も風の日も電動自転車で通う義母の元気な姿には頭が下がります。
今では義母自身が後期高齢者となり、介護している対象の方が義母より年下であることも珍しくなくなってきたそうです。介護される側の人にとっては複雑な気持ちかもしれないな…と思うのですが、義母自身はむしろそれが自分の若々しさの証明のようで嬉しそうでもあります。
しかし、そんなキラキラ生き生き働く高齢者だった義母も、さすがに最近は衰えが目立つようになってきました。自転車の運転にも少しずつ不安が出てきて、引き受ける仕事の件数を減らしたり遠方の仕事は断ったりしてきたのですが、ついにこの春、ヘルパーの仕事を卒業する、と義母は一大決心したのです。
「主婦業に専念」というありがたい申し出
同居嫁である私が、子どもたちの学費のためにどんどん働かなくては…という状況になったこともあり、そろそろ介護のパートを辞めて家で主婦業に専念したい…と言い始めた義母。そもそも義母の年齢的にはいつ本人が要介護状態になってもおかしくはないわけで、さらに主婦業を続けてくれる気力があるというのは私にとってもありがたい限りです。
人に頼られるのが義母の生き甲斐ということもあり、介護ヘルパーを引退しても、体力の続く限りは主婦業をお願いしよう、と、ありがたく義母のお言葉に甘えるつもりでいました。
しかし、2月を過ぎても、3月を迎えても、義母が仕事を辞める様子はいっこうに見えません。いや、別に急かすつもりはないのですが、春には辞めるという話でしたよね…?と義母に聞いてみたところ、返ってきたのは「私、辞めるのやめたわ!」という驚愕の返事でした。
…なぜそんなことになったのか、義母から話を聞いてみたところ、決心を翻すきっかけは、あるテレビ番組だそうで。とあるニュース番組で、義母と同じように高齢でありながら元気に介護の現場で活躍するヘルパーの方が特集されており、そこにはなんと90代でヘルパーとして働き続ける女性が紹介されていたというのです。
「90過ぎても元気で働いている人がいると思うと、私も引退してる場合じゃないと思って元気が出てきたの!あと10年は頑張れそうな気がする!」とのこと。
やはり義母と私とは違う種族
いや…だったら早めに教えて欲しかったな〜という気持ちはもちろんあるのですが、義母のこういう唐突なところは昔からです。もはや諦めの境地であります。そして何より、義母のパワフルさ、そして人生に対するアグレッシブさには、改めて感服しました。
いま仕事を辞めても決して生活に困るわけではないのに、そして加齢に伴って体のあちこちに故障が出てきているというのに、それでも働くことへと彼女を突き動かすものはなんなのでしょう。
私はいま40代そこそこの兼業主婦ですが、可能ならばもう今すぐにでも引退したいという気持ちでいっぱいです。子どもたちの学費や自分たち夫婦の老後の資金の問題があるので何とかふんばって働いてはいますが、もし生活に余裕があるならばさっさと隠居しているに違いありません。
やはり、義母とは生き物として種族が違うのかもしれない…。
今日も張りきって仕事に向かう義母の背中を見送りながら、1日でも長く義母が義母らしく働いていられますように、と願う日々です。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ