苦手だったから「学校の嫌さ」も描ける

──『氷の城壁』にはご自身の高校時代が反映されている部分もありますか。

 

阿賀沢さん:いや、そうでもないですね。

 

すごくキラキラした高校生活でもなく、かといって闇落ちしているわけでもなく、すごく平凡だったので、作中の出来事と自分の学生時代はそこまで関係ない気がします。

 

10代は楽しかったですけど、学校という空間は苦手なことが多かったです。だからこそ今になって学校の嫌さも描けているのかもしれません。

 

氷の城壁
男性たちがノリで声をかけてくるのは「好意ではない」と話す小雪(『氷の城壁』第10話「日野陽太」より)(c)阿賀沢紅茶/集英社

── 学校という箱に詰め込まれるしんどさだけでなく、友達と気持ちが近づいたり、通じ合ったときの嬉しさのような瑞々しい感情もたくさん描かれています。10代を追体験しているような気持ちで読んでいる大人も多いかもしれません。

 

阿賀沢さん:『氷の城壁』が意外と上の世代の人にも読んでもらえていると聞いて、なんでなんだろうと自分でも考えたんですが、それぞれのキャラを少し遠めの距離から俯瞰して見ている感じになれるのかな?と勝手に想像しています。

 

特定の誰かひとりのキャラの視点で作品を楽しむというよりは、メインキャラの4人を全体的に見ているような感覚で、それぞれの感情が行き違う姿を見てもらっているのかもしれません。

 

PROFILE 阿賀沢紅茶さん

集英社少女マンガグランプリで特別賞を受賞し、2020年ウェブトゥーン『氷の城壁』にてデビュー。現在は集英社マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」にて、付き合いたての高校生カップルを描く『正反対な君と僕』(隔週月曜更新)を連載中。コミックス3巻好評発売中。

 

取材・文/阿部花恵