娘は「一緒に生きてきた相手」

── どんな子育てをされていたのか気になります。子育てにおいて、心がけていたことはありますか?

 

高橋さん:子育ては、それぞれの家庭で考え方が違いますし、なにが正解というものはないと思っています。

 

ただ、わが家の場合には、どんなときでも子ども扱いをせず、ひとりの人間として接することを心がけてきました。いいことも悪いことも包み隠さず、ありのままの状態を見せ、「今、こういう状況になっていて、ママはこんなふうにしようと思うんだけど、あなたはどう思う?」と、その都度、娘の気持ちと意見を聞くようにしてきました。

 

「育てる」というより、「一緒に生きてきた相手」という感覚なので、一般的には少し変わった親子関係かもしれませんね。

子どもの主体性を伸ばしたかった

── 以前、お父様の強烈なスパルタ教育について伺いましたが、ご自身の子育てに影響している部分はあるのでしょうか。

 

高橋さん:厳しすぎた父の子育てが反面教師になっている点はありますね。

 

子ども時代、ピアノの練習を強制され、窮屈でつらい思いをしたので、娘には、主体的に考え、行動できる人間になってほしいという思いがあります。

 

高橋洋子さん
生後3か月の娘を抱き、母親としてはつらつとした表情の高橋さん

そのため、小さな頃から、やりたいことや欲しいものがあれば、子ども自身が「なぜそれが欲しいのか、必要な理由はなにか」を説明するのがわが家のルール。要はプレゼン方式です。

 

中学3年のときにも、「行きたい塾がある」というので、なぜそこに行きたいのか、本当に必要なのか、何教科だといくらになるのかなどをプレゼンしてもらい、私が納得できたら合意。「じゃあ、ママは頑張って働きますね」と伝えました(笑)。

 

── 子どもの頃からそうした環境に慣れておくと、考える力と伝える力が養われそうです。

 

高橋さん:そのうえで、一度やると決めたことは、すぐにやめるのはNG。最低でも「ここまではやる」とラインを決めてから始めるようにしています。自分の言葉に責任を持ってもらいたいからです。

 

もちろん私自身もそうでないと、子どもに示しがつきません。親の言うことがコロコロ変わると、子どもは混乱するし、「それでいいんだな」と思わせてしまう。ですから、安易な前言撤回をしないように、こちらも真剣に聞くし、考えますね。

 

子どもに「これをしなさい」と強制したことはありませんが、感性を養うような場所には昔からよく連れていきました。美術館に絵を見に行ったり、素晴らしい音楽を聴きに行ったり、落語に一緒に行ったり。

 

── お子さんと一緒に落語ですか!

 

高橋さん:落語はいいですよ。語彙力も磨かれるし、笑ったり泣いたりで、五感が刺激されます。

 

PROFILE 高橋洋子さん

1966年、東京都生まれ。1991年に「P.S. I miss you」で、ソロ歌手としてメジャーデビューし、レコード大賞新人賞、有線大賞新人賞を受賞。『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」、97年に公開されたアニメ映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』主題歌の「魂のルフラン」は、現在に渡りロングヒット中。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/高橋洋子