「震災から10年以上経ったからもう大丈夫」ではない

「震災から今年で12年経ちますが、『10年以上経ったからもう大丈夫だよね』というわけではありません。特に、家族を失った子どもは成長するなかで喪失感が大きく膨らんでいき、さまざまな症状が出てきます。

 

子どもたちには楽しかった思い出を胸に成長してほしいと思っていますが、震災がなければ耐えられるいろいろな出来事も、震災で大きなものを失ったことでこころが折れやすい状態になることがあります。小学校には通えていたのに、高校生になってから学校に通えなくなり、『どうして私だけがこんな目に遭うの!?』と辛い気持ちになる子もいます」

 

毎日、早朝から夜まで子どもや母親の支援のために走り回り、夜には子どもを亡くした母親からも電話が絶えず鳴り、話を聴いている志村さんは「3月11日前後は一睡もできないくらい忙しい」と言いますが、不思議と表情は穏やか。

 

団体設立から8年目頃に、「もう限界かもしれない」と感じてからは、団体内の職員たちに自分の話を聴いてもらい、保護犬たちに癒やされることで乗りきっているといいます。

 

「まわりからは『人のケアばかりで、志村さんが死んじゃう』と心配されるのですが、放っておけないんです。おせっかいなのかな(笑)。

 

私は子どもたちが幸せになってくれれば、私たちのことは忘れてもらってもいいと思っています。今までたくさん辛いことがあった分、幸せになってほしいです」

 

PROFILE 志村知穂さん

一般社団法人こころスマイルプロジェクト代表理事。東日本大震災の発生後すぐから石巻市内で子どもを中心とした支援活動を開始。小学校への雑巾プロジェクト、給食プロジェクトなど必要な支援を行った後、親を亡くした子ども、子どもを亡くした母親のこころのケアを行うように。2012年12月、一般社団法人こころスマイルプロジェクトを設立。

 

取材・文/高梨真紀 写真提供/志村知穂