夫と妻の「普通」が違うからケンカになる

── 夫婦カウンセリングでは、水谷さん自身の認識も大きく変わったとか。

 

水谷さん:変わりましたね。カウンセリングに行く前は、キレる夫が「困らせる側」で、妻の私が「困っている側」という構図でしか、この問題を見ていなかったんですよ。でもカウンセリングを受けた結果、実は「私のほうが普通じゃなかった」ことがわかった。

 

── 水谷さんのほうが「普通じゃなかった」とは? 

 

水谷さん:カウンセリングの先生の言葉を借りると、私は「他者にまったく期待していない」「そういうタイプの人はほとんどいない」レベルで少数派だそうなんです。人に期待をしないから、諦めるのが上手。

 

そういうと聞こえはいいのですが、その分ノダDの怒りの気持ちに共感できないことも多くて。

 

たとえば「メールの返信がない!」と怒るノダDに対して「ノダDは期待しすぎ」と思っていたんです。でもカウンセリングで「こういう人はほとんどいません」と言われて「あれ?私のほうが気にしなさすぎなのかな?」みたいに思えて。

 

「普通じゃないのは私のほうなの?」と、すごくショックでしたね…。

 

夫婦ゲンカでも、「自分は普通で、相手がおかしい」と思い込んじゃうことってよくあるじゃないですか?自分にも「特性」はあるんだなと自覚できました。

 

夫のために通い始めたカウンセリングで妻側の認識が大きく変わった

── 夫婦それぞれの特性が違うから、それぞれの「普通」がすれ違う。夫婦ゲンカの原因の多くはそこかもしれません。

 

水谷さん:ただ、この「普通」問題も一概にそうとばかりは言いきれないんです。DVやモラハラのように、どちらかが明らかに加害者で、どちらかが被害者だとはっきりしているケースもありますから。

 

夫婦関係が「加害」と「被害」だけになってしまったら、必要なのはカウンセラーじゃなくて弁護士だと思います。

 

対等にケンカができるうちはまだ大丈夫なんですよ。でもどちらかが経済力や暴力、暴言などによって、一方的に従うことでしか家庭が運営できないのであれば、弁護士や第三者の支援を受けるべきです。

 

PROFILE 水谷さるころさん

1976年千葉県生まれ。イラストレーター、漫画家、グラフィックデザイナー。女子美術短期大学卒業後1999年漫画家デビュー。2008年、旅チャンネルの番組「行くぞ! 30日間世界一周」に出演、その道中の顛末を漫画化し全3巻、続編全5巻の人気シリーズに。著書に『世界ボンクラ2人旅!』『結婚さえできればいいと思っていたけど』などがある。

 

取材・文/阿部花恵 画像提供/水谷さるころ