キレる以外にも選択肢があると知る

── マンガでは「俺は悪くない、普通だ!」と思い込んでいたノダDさんが、カウンセリングを通じて「感情の抑圧が強い」「規範意識が高い」などの特性を持っていること、それがキレる行為につながっていたことが明らかになっていきます。

 

水谷さん:ノダDは自己開示が下手なんですよ。愚痴をこぼして感情を消化することが苦手。だから我慢して感情をグッと溜め込んで、でも最終的にはキレてしまう。

 

さらに規範意識が高いので、「これが正しい、そこからはみ出るのは許せない」という発想になって怒りを引き起こしやすい。

 

ただ、規範意識が高いこと自体は、悪いことじゃないんです。人によってそこに差があるのは当たり前だから。重要なのは、自分の規範意識から外れたものを前にしたときに、どう対処するかです。キレる以外の選択肢があることを、まずは知る。

 

パッと怒るのは問題が解消するみたいな感じがあってラクなんです。でも、実は解決はしてなかったりする。キレるというラクな道ではなくて、感情を表出する他の方法を探してみる。そこを意識するだけでも、行動は変えられます。実際、ノダDも少しずつ変わっていきました。

 

カウンセリングを経て、夫は腹が立つ原因や感情の出し方を意識するようになった

そういう新しい視点を外から一度もらえると、人って元の自分には戻らないんですよ。「他にも選択肢がある」と気づけるようになれば、建設的な努力ができるようになるし、それができた自分の評価も上がるんですよね。

 

PROFILE 水谷さるころさん

1976年千葉県生まれ。イラストレーター、漫画家、グラフィックデザイナー。女子美術短期大学卒業後、1999年漫画家デビュー。2008年、旅チャンネルの番組「行くぞ! 30日間世界一周」に出演、その道中の顛末を漫画化し全3巻、続編全5巻の人気シリーズに。著書に『世界ボンクラ2人旅!』『結婚さえできればいいと思っていたけど』などがある。

 

取材・文/阿部花恵 画像提供/水谷さるころ