将来を細かく計画せず、その時の考えやご縁を大切にする

── 今年の4月に50歳になります。この先の目標や展望などはありますか?

 

住吉さん:私、あんまり先々まで計画をしないんですよ。小さいとき、「英語の仕事がしたい」と思っていたのに、父が転勤になってそれに興味が持てなくなった、ということもあったり。

 

あまり細かく決めても意味がないな、と思うようになりました。人生何があるかわからない、その時々で、どんなご縁がやってくるかわからない。だから、遠い先までの計画をしなくなったんです。

 

今自分が思うことと、何年か先に自分が思うことも違う。なので、大まかな方向性やご縁を大切にしながら、そのとき自分が思っていることに忠実に、丁寧に生きていこう、と。

 

ラジオはライフワークなので続けたいと思っていますが、それは自分の意志だけでは決められないですよね。

 

皆さんもそうだと思うんですけど、家族のことや、自分が計画していることと違うことが起こって、計画を変えざるを得なくなることって人生ではよくある。でも、人は一人で生きていないし、それが人生なので仕方がない。

 

ただ、そのときに、自分はどういう人間で、どういう指針や信念を持って生きているのかを意識しておくことが大事だなと思っています。

 

そうすると、何か大事な選択しないといけない時に、ぱっと「こっちじゃないか」とわかる。私はどういうことをやりたいのか、どういう人なのか。どういう役目があって社会にいるのかということを自分なりに意識しておくことが大切だと思っています。

 

住吉美紀さん
「自分がどういう人で、どういう指針を持って生きているのかを知ることが大切」と語ってくれた住吉さん

「幸せは“なる”ものじゃなくて、毎日つくるもの」

── それは常々考えておく、ということなんでしょうか。それとも、感覚を研ぎ澄ましておくことが大切でしょうか。

 

住吉さん:うーん、そうですね…。たとえば何か仕事をしてみると「この仕事、本当にやりがいがあったな」とか思いますよね。そこで「私、やっぱりラジオが好きなんだな」とか「やっぱり私、インタビューとか対談が好きなんだな」と自覚して、心にメモしておく。そういうことの積み重ねな気がします。

 

幸せって、「なって終わり」っていうものじゃなくて、毎日、常に「つくる」ものだと思うんです。自分が何をしていると幸せだと思えるのかを知っておく。それを毎日のように実行する。それが幸せになるコツだと思います。

 

「キッチンで料理しているときがいちばん幸せ」「人と話しているときが幸せ」「書斎にこもって何か調べているときが幸せ」とかね。人それぞれ「今楽しい、幸せ」と思う瞬間は違う。何をしている時に、自分が幸せと思っているかを自覚する。その積み重ねが、幸せな人生につながると思っています。

 

PROFILE 住吉美紀さん

1973年生まれ。小学生時代をシアトルで、高校時代をバンクーバーで過ごす。1996年NHK入局。「プロフェッショナル仕事の流儀」「スタジオパークからこんにちは」などを担当。2011年からフリー。2012年からラジオ番組「BlueOcean」のパーソナリティを務める。2022年からSpotifyでポッドキャスト「その後のプロフェッショナル仕事の流儀」がスタート。

 

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美