42歳のときに再婚した、フリーアナウンサーの住吉美紀さん。現在はお二人で暮らしていますが、「子どもが欲しい」と不妊治療に挑んだこともあったそう。いつもポジティブな印象の住吉さんですが、このときばかりは友人や担当する番組内で語られる「子育ての話題がつらい」と感じたことも。乗り越えられたのは、日々の仕事の存在が大きかったと語ります。(全5回中の5回)

 

住吉美紀さん

「放送に影響が出てしまうのでは」と言い出せず

── 住吉さんは42歳でご結婚されました。子どもを持たない、という選択に対して、どのような思いをお持ちですか。

 

住吉さん:実は今の夫と結婚した年齢が遅くて。子どもが欲しくて、不妊治療もしたんですけど、できなかったんですよね。なので、諦めました。

 

仕事や人生を一体で考えたときに「私はこの道で行くんだ」と自分のなかでだんだん思えるようになりました。時間はかかったけれど。

 

だから、今もすごく悩んでいる人とか、治療を頑張っている人とか、自然と恵まれる方、恵まれない方、両方いるのもよく知っていますし。私もその時期は気持ちのうえでも大変だったので、本当はそういうことで悩む方々の力になれるようアプローチしたいな、という思いもあります。

 

住吉美紀さん
アナウンサーのかたわら、夫婦で飲食店を営んでいる住吉さん。猫も大事な家族です(写真提供/本人)

── そうだったんですね。

 

住吉さん:当時は誰にも言えず。本当に近い人にすら、ほとんど言えなかったです。

 

ラジオで生放送のレギュラーを担当しているのに「もし妊娠したらどうするんだ」と、まわりに思われるのも心苦しい。妊娠したら、放送にも影響を与えてしまう。いろいろな思いがあって、とにかく仕事関係の人には誰も言えなくて。

 

私の場合、本当にいろんなところで友人同士がつながっているので、友達にもみんなには言えなくて。とても限られた人や家族にだけ伝えていました。

 

不妊治療を経験した方はわかると思いますけど、時間調整をしないといけないんですね。仕事の都合とは関係なく、自分の身体の周期で「この日は何時にクリニックに行かなきゃいけない」というのが決まり、やりくりしないといけない。かつ、治療がうまくいかないことへのショックも重なって。何年か、精神的にとてもつらい、常にモヤモヤする状態と向き合い続けました。

 

なんですかね…。不妊治療は始めると、絶対に子どもができないと幸せになれない、と思い込んじゃうんですよね。

「子育ての話題がつらい」と感じたことも

── 追い詰められてしまいますよね…。

 

住吉さん:でも、やっていくうちに「これはどうやら恵まれないし、続けていくのもどうなのか」という思うことが少しずつ増えて、夫婦で話し合って区切りをつけました。

 

それでもやっぱり、一時は友人同士の会話や、番組内で、子どもの話や妊娠の話を聞くとつらいな、と感じた時期もありました。もちろん、そんなことは放送ではおくびにも出せなかったですけれど。

 

── それはつらいですね。

 

住吉さん:でも、ちょっとずつ自分で意味を見つけられるようになったんですよね。

 

人によって「なんのために生きているのか」というのを考えたい人と、「深い意味なんてないよ」って方と、両方いると思うんです。私は「何のために生きて、どういう人生にしたいのか」と考えるタイプ。自分はラジオや仕事にエネルギーを注ぎ込むことで社会に貢献することが使命の人生なんだ、ということを、日常の仕事のなかから感じるようになって。

 

「もし子どもを持ったらこういう働き方はできなかった」などと、仕事を通じて一歩一歩再確認していくなかで、「この生き方でいいんだ」と腑に落ちた、というか。

 

「ここに私の居場所がある」「きっと大丈夫、これでいいんだ」と感じられるようになった、ということが大きかったですね。

 

住吉美紀さん
現在49歳の住吉さん。今後の目標を聞くと「あまり先々まで計画をしないんですよ」と語ってくれました