盆暮れ正月休みなしで「インフラになろう」と決意

── ラジオって生活と密接していますよね。テレビでは年末特番を放送しているけれど、ラジオは年末年始もいつも通り放送してくれてホッとしました。

 

住吉さん:そうそう。ラジオを始めたときに、「あれ、こんなに休みないんですか?」みたいな(笑)。盆、暮れ、正月、全部やるんです。

 

しかも「BlueOcean」は午前中の番組で、ほとんど放送休止になることがなく、毎週月曜から金曜日まで毎日きっちりある。「私はインフラになったんだ」とあるとき気づきました。「電車、コンビニ、ラジオパーソナリティ」と、覚悟を決めて頑張っています。

 

だからこそコロナになったら、絶対みんなにショックを与えてしまうという危機感はありましたね。でも、コロナ禍早々にかかってしまった、という…。

 

住吉美紀さん
2020年に新型コロナウイルスに感染。入院生活も経験し、体調が戻るのに時間がかかったそうです

── まだワクチンもない、感染拡大初期の感染でしたよね。

 

住吉さん:そうですね。ただ、同時に、みんなとともに生きるという意味では、私が真っ先にかかったことで、コロナ禍中、皆さんの恐怖の気持ちを受け止めたり、実体験に基づいてお伝えしたりということができた。しんどかったですけど、ある意味、ラジオパーソナリティとして運命だったのかなと思いました。

 

その意味でも、コロナ禍をリスナーと一緒に歩んできた実感があります。リスナーさんとは、会ったことがなくても不思議と信頼関係が生まれるんですよね。メールでリスナーの暮らしについて伺っていたり、自分も暮らしのなかの出来事を話しているので、どこかでお会いしても、ラジオネームを聞くと「わー!ペットのムギちゃんはその後、元気ですか?」みたいなお話がすぐにできる。

 

リスナーさんも「住吉さん、この間の腰痛は大丈夫でしたか」とか。ご近所さんみたいに話せるところがラジオの魅力で、性に合っています。

 

リスナーの毎日の生活や思いを受け止めるんですよ。そこが、“受け止めの芸”に、合っていたんですよね。

 

最初はラジオもやり方がわかるまでは「どうやってひとりでしゃべるの?」と試行錯誤したんですが、しばらくしておもしろみがわかってきてからは「天職かもしれない」と思えるようになりました。「社会での居場所をいただけて、ありがたい」と感じながら日々務めていますね。

 

住吉美紀さん
いつも自然体の住吉さん。ラジオではほとんど素のままなのだとか

ラジオは日常のままの私がいる

── 毎週金曜日の、寄せられた悩み相談についてリスナーみんなで考える「オトナのなんでも相談室」でも、住吉さんの采配が絶妙だなといつも思います。

 

住吉さん:ありがとうございます。たぶん、「私がお悩みに答えます」という“住吉美紀の相談室”ではないところがいいんですよね。

 

そもそも、すべての相談に対して私がベストの答えを持っているはずがない。それこそ子育ての悩みが来たら、私、子育てしたことないからわからないわけですよね。

 

みんなで考えたり、経験をシェアしたりすれば、きっといい知恵が出てくるはず。「みんなの悩みも、知恵も受け止めます」という姿勢が「オトナのなんでも相談室」の人気の秘密だと思います。

 

ラジオは日常のままの私がいるんです。友達の前とほとんど一緒。友人と女子会していても、曲が途中で流れないだけで、番組のように進行していたりするし(笑)。時間配分を考えて「そろそろあの話題に行かないとだな」と思って、話を振ったり。

 

──(笑)。

 

住吉さん:先日も友人と年始のごはん会をしたときに、それぞれ今年の占いを分析しようとなったんですけど「じゃあ、最初は〇〇ちゃんからいこう!」とか仕切って、占いを朗読してあげてから「どう?今年は転機らしいけど、思い当たる節ある?」と語ってもらったり。

 

完全に職業病ですね(笑)。本当に仕事中かプライベートか、どっちがどっちかわからなくなるくらい、ラジオでは「つくっていない、私そのもの」が出ている。それがもしかしたら皆さんに「この人、ちょっと信頼できるのかな」と思っていただけるゆえんかもしれないですね。

 

PROFILE 住吉美紀さん

1973年生まれ。小学生時代をシアトルで、高校時代をバンクーバーで過ごす。1996年NHK入局。「プロフェッショナル仕事の流儀」「スタジオパークからこんにちは」などを担当。2011年からフリー。2012年からラジオ番組「BlueOcean」のパーソナリティを務める。2022年からSpotifyでポッドキャスト「その後のプロフェッショナル仕事の流儀」がスタート。

 

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美