独自性のカギは「自分の感情とのリンクを探す」
── そういうときはどうすればいいですか?
住吉さん:なにがおすすめかというと、自分との関連性を深掘りするんですよ。たとえばざっとプロフィールや資料を見る。それをもとに「私も30歳ぐらいのとき悩んでいたな」とか「私の転機は35歳だったけど、この方は38歳に転機があったんだな」とか考えてみる。出身地がここだったら、小さいときこんなことで苦労しただろうな、とか。
自分が個人として抱いている感情との、リンクを探していくんです。そうすると本当に疑問に思っていることが質問として出てくるんですよ。
すると「この話、初めてしました」というお話をしてくれることがあるんです。
それが独自性のあるインタビューの入口かな。有名な方ほどいろんなところで話をされているので、「今日初めてします」なんて話はほとんど出ない。でも、その可能性があるというのが素敵なことなんですよ。
「インタビューされた方の役にも立てる」
住吉さん:今、Spotifyで「その後のプロフェッショナル仕事の流儀」という、当時プロフェッショナルでインタビューをした方々に15、6年ぶりに会って話を聞こう、という企画、いわゆる“同窓会”的ポッドキャストというのが実現していまして。
当時番組でインタビューした方は、プロフェッショナルに出たことが転機になった方も多くて。ありがたいことに「その後の話をしたかった」と出演を快諾してくださる方が大勢いらっしゃるんです。
しかも第一線で活躍されている方々の、40代から50代、60代の15、6年なので、人生めちゃくちゃいろんなことが起きている。転職された方、引退して別職に就いてる方、どん底を経験してまた再生してる方、とか。
うれしいことに、部屋に入ってきた瞬間から「住吉さんと話したかった。あのあとね~」と話してくださる方も少なくないんです。
そうなると、こちらも質問も最小限で「えー、本当に!?」と相槌をうっているだけで、皆さんがすごい人生談を語ってくださる。そこで私がちょこっと「それは、どうしてですか?」とか「このためにさっきのあの出来事があったんですね」と話が盛り上がって。対談後、「16年の人生振り返りができた、よい機会になった」と言ってくださる方もいました。
私としては、心動くお話が聞けて、それを聴視者の皆さんに聞いていただけるだけじゃなく、インタビューされた方の役にも立てるというのは、インタビュアー冥利に尽きます。
PROFILE 住吉美紀さん
1973年生まれ。小学生時代をシアトルで、高校時代をバンクーバーで過ごす。1996年NHK入局。「プロフェッショナル仕事の流儀」「スタジオパークからこんにちは」などを担当。2011年からフリー。2012年からラジオ番組「BlueOcean」のパーソナリティを務める。2022年からSpotifyでポッドキャスト「その後のプロフェッショナル仕事の流儀」がスタート。
取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美