JR東海の新幹線運転士・原由佳さん。原さんが新幹線の運転免許を取得したのは40歳のとき、小学生の子どもが2人いる状態で新たなチャレンジを始めました。東京―新大阪間の2時間半。常に緊張した状態で新幹線を運転しながら、どのように仕事と家庭に向き合っているのでしょうか。

新幹線停車の6分間でおよそ100個の確認

── JR東海は、東京―新大阪間を運行しているとのこと。原さんは、1回の勤務で新幹線を運転する距離や本数など、決まっているのでしょうか。

 

原さん:1回の勤務で運転する本数や距離は毎回異なります。東京―新大阪の片道で1本と考えますが、1泊2日の勤務で4本くらいです。

 

また、運転をスタートする時間も毎回異なります。たとえば、お昼からの勤務であれば、東京から新大阪まで運転して、新大阪から静岡まで戻って、その日の業務は終了して現地に泊まる。翌日に静岡から東京に戻ってくるパターンもあります。夕方からスタートして、途中でどこかに宿泊して、再度新幹線を運転して翌日の夕方に勤務が終わるなど、毎回シフトは違いますね。

 

── 運転はおひとりで担当するのでしょうか?運転席の横には、副運転士のような方はいらっしゃるのでしょうか?

 

原さん:昔はいましたが、今はひとりで運転しています。車内には2人の車掌がいて、安全確認やお客さまの対応などをしていますが、新幹線を操縦しているのはひとりですね。

 

── 運転士のお仕事で、特にここは大変だと思うのは、どんなところですか。

 

原さん:新幹線が止まっているときに、限られた時間で、ありとあらゆるチェックをしています。東京駅の場合、新幹線が到着し発車するまでの時間は、いちばん短くて6分です。この6分間に、機器が正しい位置にあるか、正確な数値を表示しているかといった、ざっと100個くらいの確認項目をチェックしています。

 

── 100個もあるのですね…!しかも、新幹線が動き出した後も、気が抜けないですよね。

 

原さん:東海道新幹線の最高速度は時速285キロです。自動運転ではないため、自分で次の駅まで距離や速度、時間、そして安全面など、常に計算しながら走っています。

 

ただ、万全の準備で臨んでいても、トラブルやイレギュラーな事態が起きることもあります。運転をしながら、車掌や指令員と連絡を取るなど、いろいろなことを同時進行していますね。

 

── 精神的にも体力的にもハードなお仕事かと思いますが、プレッシャーなどありませんか?

 

原さん:そこは…あります。

 

ただ、自分が乗務するときは最善の注意を払って、責任を持って運転していますが、過剰にプレッシャーや恐怖心を背負いすぎないようにはしています。運転士が不安だとお客さまにもっと不安を与えてしまいますよね。淡々と、正確に仕事を進めていくように努めています。