大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、ご主人を突然亡くした同僚をどう支えればよいか、なんと声をかけたらよいかと悩む女性の相談にお答えします。

 

「突然ご主人を亡くした同僚…周囲にできることは?」P1
「突然ご主人を亡くした同僚…周囲にできることは?」P1

【Q】そばにいる自分にできることって?

半年前、同僚のご主人(30代)が事故で突然亡くなりました。会社では気丈に振る舞っていますが、想像を絶するつらさだろうと思います。彼女には娘(5歳)がいます。「困ったことがあったらなんでも言ってね」と声をかけてはいるのですが、まだ何もしてあげられておらず、もどかしいです。

 

でもいくら私が声をかけても、こちらは夫とともに子育てする立場。「きっとあなたには分からない」と思われてしまうかな、とも考えてしまいます。身近な人を亡くした人に、どんな言葉をかけ、どんなサポートをすればよいでしょうか。

親しい人が亡くなると「喪の作業」の過程をたどる

失意のなかにいる人に対し、何かしてあげられることはないかと真剣に考える相談者さん、ご立派だと思います。「どんな言葉をかければよいか」というご相談ですが、基本的に言葉がけは不要だと思います。

 

心理学では親しい人が亡くなった場合、人の心は「喪(も)の作業」(モーニングワーク/グリーフケア)という過程をたどると考えられています。喪の作業には4つの段階があります。 

 

  1. 麻痺(激しいショックを受ける)
  2. 否認(喪失を認められず、亡くなった人がまだいるかのように振る舞う)
  3. 絶望(激しい失意で抑うつ状態になる)
  4. 離脱(喪失を受け止めて、立ち直ろうとする)

 

悲しみが癒えるわけではありませんが、この4つの段階を経ることで、親しい人が亡くなったことを認めて受け入れ、自分の心のなかを落ち着かせていきます。当事者のなかでの「喪の作業」が進めば、自然と心が回復してくるでしょう。

 

ただ、回復には大きな個人差があります。どれくらいの期間が必要かは人それぞれであることも、知っておいてほしいです。