「臨月も着物でおでかけ」自分の日常が海外でバズるなんて
── 現在、娘さんは3歳半、動画のなかでは愛称”Sutan”として料理のお手伝いもしています。「やりたい、やりたい」「やだっ」と意思表示する様子がかわいらしいですね。
MOEさん:最初は娘を登場させるつもりはなかったのですが、抱っこしないと泣いちゃう子だったので、あやしながら撮影することに。
いまでは少しずつお手伝いもしてくれていますが、娘と一緒だと撮影に3倍の時間がかかります。でも、料理をとおして娘に伝えたいことがたくさんあるので、一緒に撮影しています。
── MOEさんの作る動画の人気の理由は何だとお考えですか?
MOEさん:あくまで、“身の回り”を扱っていることでしょうか。例えば、料理だと寿司・天ぷら以外の日本人がふだん食べる家庭料理を作る様子って、珍しいみたいです。
「日本文化を伝えたい!」「日本ってすごいでしょ」ではなく、淡々と日常を伝えるところがいいのかな?
── 海外に向けてだと、日本のすごいところをついアピールしたくなりますが、あえて等身大の日常にフォーカスをあわせているのですね。
MOEさん:とくに着物は海外向けに頑張って着ているのではなく、もともと好きで10代の舞妓・芸妓時代から日常着でした。
その後も妊娠中のお出かけは、帯を調節して着物のまま臨月まで過ごしたくらいです。
着物で料理をするのは大変そうに見えるかもしれませんが、私にとってはやはり日常なんです。
そういえば舞妓時代のお客さんに「身の回りのローカルなこともつきつめれば、いずれはグローバルにつながる」と教えていただいたことがあります。
「Kimono Mom」を始めたとき、この言葉を思い出しました。身近なことを一生懸命頑張るのが大切。海外の方にうけようと力みすぎず、等身大の自分ができることを伝えたいです。
── 海外で日本の家庭料理を作る人たちのために、動画制作だけでなく一歩踏み込んだ活動をはじめられたそうですね。
MOEさん:この3年間、視聴者とのやりとりをとおして、海外では日本食を作るための調理器具や調味料が手に入らず、困っている人がたくさんいると知りました。
そこで海外でもっと日本食を楽に作るため、調理器具を販売したり、調味料を開発することに。
昨年には思いきって「Kimono Mom」を法人化しました。海外の方が日本の食文化に触れるお手伝いがもっとできればと思います。
PROFILE MOEさん
京都府出身。祇園で舞妓・芸妓として活躍。2020年2月にYouTubeチャンネル「Kimono Mom開始、2023年1月末時点で登録者150万人近く。海外メディアでの掲載多数。3歳児ママ。
取材・文/岡本聡子 画像提供/MOE