テレビの視聴者も「予定不調和」に目が離せず

馬場ももこ

── 下準備をされてもさらに準備が必要そうですね。その後、テレビ金沢に移られましたが、テレビ金沢ではいかがでしたか?

 

馬場さん:テレビ金沢時代も鍛えられました。覚えているのは、新しいお店の紹介やお出かけスポットをお伝えするような、10分程度の生放送の番組があったんです。

 

その日は、いろいろな情報を紹介したのち、最後にお店の方にチキン南蛮を出していただいて、みんなで食べましょう!という流れでした。

 

いざ本番。予定通り番組が進行して、最後に「では、名物のチキン南蛮をお願いします!」と言ったら、出てこないんですよ、チキン南蛮。え…?チキン南蛮どこ?ってなるじゃないですか。番組開始5分前には、テーブルの上に置かれていたのも見ていましたし。

 

すると後ろからサクッ、サクッって何かを切ってる音が聞こえるんです。

 

お店の人が「冷めたからもう1回作ってます」って言っていて、ディレクターさんがちょっと焦ってるんですよね。お店の方も多分、温かいものを出したいというポリシーがあったんでしょうか。

 

ただ、生放送なので黙るわけにはいかない。「ちょっと今、後ろでチキン南蛮作ってますね〜」とか言いながら、「ここに、ご飯ありますね」って、ご飯だけで3分くらい繋いだんですよ。チキン南蛮がない状態で、白米の味だけで3分もたせたことは、今でも覚えています。

 

── テレビを観ている側も、中継から目が離せないような気がします…。

 

馬場さん:「予定不調和」を楽しんでくださる方もたくさんいるので、そのときの状況としてお伝えします。「あぁ、出す予定だったものが来ないですね。お店の方がとっても優しいんですよ。温かいものを出したいとおっしゃって、もう1回作ってます。え〜と、そのあいだにですね、後ろには、赤ちゃんたちが遊べるコーナーとかもあるんで、ちょっと、見ますか…?こっちにはこんなクーポンありますよ」って紹介して、戻ってきたらチキン南蛮が届いてるっていう。

 

中継先で何が起きるかわからないので、あらかじめ10個くらい、他の情報を持っておくようにしています。

 

── 馬場さんの反応やリアクション、「予定不調和」に対応する姿も楽しみにされている方もいそうです。

 

馬場さん:リアクションがおもしろい!と言っていただけることも多くてありがたいですね。私が素で驚いたり、臨機応変に対応したり。それに、どんな状況でも番組を観てくださっているのはとても嬉しいです。トラブルや予想外の事態に自分がどう対応するか。瞬発力を鍛えてくれたのは、佐渡と石川だなって思っています。

 

PROFILE 馬場ももこさん

1991年生まれ。新潟県出身。佐渡テレビ、テレビ金沢でアナウンサーとして活躍。2019年4月からセント・フォースに所属し、フリーアナウンサーとして活躍中。

 

取材・文/松永怜 撮影/阿部章仁