「親になり、災害時に意識することが変わった」と話す、テレビ東京アナウンサーの狩野恵里さん。新人時代に東日本大震災を経験し、現在は局の垣根を越えた防災減災がテーマの共同プロジェクトにも参加しています。アナウンサーとして防災を呼びかける立場だけでなく、ひとりの親として伝えたい「備え」について伺いました(全4回中の2回)。
大事な情報を必要な人に届けるために
── 東日本大震災の頃は新人で、歯がゆい思いをした経験を経て、現在は在京の民放キー局とNHKの6局共同の「#いのちともに守る」プロジェクトに参加しているそうですね。
狩野さん:災害が起きた際、身を守るためにどう行動するかが重要ですが、普段からの備えも大切です。
家族がバラバラの場所で被災したら、どこで落ち合うか相談しておく。食料や水の備蓄は3日分、理想は1週間分とされています。たとえば大人ひとりに必要な飲料水は、1日3L。2人で3日分だと18Lで、2Lのペットボトル9本です。
このほかトイレを流す水など、生活用水を空のペットボトルに汲み置きしておく。かなりの量になりますが、わが家では3日分以上は、常に備えるようにしています。
── プロジェクト参加を機に、防災士の資格も取られたと聞きました。
狩野さん:難しい資格ではないし、あまり「防災士の資格、持っています!」とアピールしたくはないのですが(笑)、勉強の一環で取得しました。ただ、資格の勉強をする過程で、何げなく使っている言葉を改めて確認できたのは、良かったですね。
すぐ報道に生きるわけじゃなくても、たとえば「大地震」はマグニチュード7以上。「緊急地震速報」がいつ、どういう背景でできたのかなど、知識として持っていることで、少しでも深みがある言葉に変えることができたらと思います。あとは資格取得のための2日間の講座が、すごく興味深い内容でした。
── どんな講義でしたか?
狩野さん:地震、水害、火災それぞれのエキスパートから、お話を聞けたんです。特に地震は、災害報道の第一線にいらした元NHKのディレクターの方でした。
阪神・淡路大震災を出張先の阪神で体験され、災害報道に目覚めたこと。東日本大震災では、「あれだけ『大津波警報です。高いところに避難してください。遠くへ避難してください』と呼びかけたのに、実は停電のため、現地には全然その声が届いていなかった」と、すごく痛烈な、ご自身への戒めのようなものを持たれている印象を受けました。
「必要な人に、いちばん大事な情報を伝えるため、私たちは何をすることが重要なのか」というお話は、同業者として響くものが大きく、講座を受けられて本当に良かったです。