「私も人の役に立てている」という思い

── 自分自身の心の安定というのは…?

 

水野さん:子どもたちが喜んだり、成長したりしている姿を見ていると幸せな気持ちになりますし、「どうやら私もお役に立てているらしい」と、自己肯定感が芽生えたように思います。実習でお世話になった園に、少しは恩返しできているかな、と感じたり。

 

また、ボランティアをしていると、弱い立場の人たちをみんなで支えたり、世代を超えて協力し合う「共生」というものをリアルに実感することができ、心が温かくなるんです。

 

日頃、浮き沈みが激しく、不確実性が高い世界に身を置いているせいか、どこかで安心できるような場所や温かな繋がりといった「心のよりどころ」のようなものを求めていたのかもしれません。

 

── そうした気持ちは、いつからお持ちだったのでしょうか。

 

水野さん:もともと私は、何かを表現したいとか、歌や踊ることが大好きといったモチベーションでこの世界に入ったわけではなくて。軽い気持ちで応募したオーディションで合格し、事務所の手厚いレッスンを受けさせていただくなかで、「どうやらこのレールから降りるわけにはいかないらしい」という感覚がありました。

 

そこからは、支えてくださる方の期待に応えたいという一心で、置かれた場所で責任を全うすることに務めてきました。そうした気持ちでやってきたせいか、「なぜ私はこの仕事をしているのだろう」と自分が分からなくなったこともあったんです。

 

──迷い悩まれた時期があったのですね。どうやって壁を乗り越えたのですか?

 

水野さん:そんなときに、「求められているのならば、やるべきだ。仕事が自分を鍛えてくれるんだよ」という父の言葉に励まされ、迷いを断ちきることができました。父は今でも私にとって仕事の良きアドバイザーなんです。

 

PROFILE 水野真紀さん

1970年生まれ、東京都出身。1987年「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。NHK朝の連続テレビ小説「凛凛と」で芸能界デビュー。初代「きれいなおねえさん」として、松下電器(現パナソニック電工)のCMに起用され、大ブレーク。以降、ドラマやCMなどで活躍中。48歳で聖心女子大学文学部教育学科に入学し、50歳で幼稚園教諭一種免許を取得。52歳には保育士試験にも合格。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/水野真紀