夫の実家との関係で悩む女性も多いでしょう。夫と結婚はしたけれど、嫁になりたくてなったわけではないと真顔で言う人もいます。当たり前の考え方ですが、それを義両親が受け入れるかはまた別の話。義理の家族関係が今回のテーマです。
「ゆううつでしかない」久しぶりに夫の実家へ行く妻
4年前に結婚、すぐに妊娠し、コロナ禍での出産という厳しい状況をくぐり抜けてきたルリさん(36歳、仮名=以下同)。現在、3歳になる長男と同い年の夫との3人暮らしです。
「夫の実家は、自宅から2時間ほど。義両親だけではなく、夫の祖父母も一緒に住んでいるので、コロナ禍にはなかなか行けません。
義母は食料品や息子の衣類などをたびたび送ってくれましたが、正直言って困っていました。食料品はインスタントばかり。保存はきくけど日常的にはそんなにいらないんですよね。
私もほぼ在宅で勤務できる状況なので、簡単でもいいから自分で作って食べさせたい。衣類にいたってはすべて義姉の子どものお下がり 。義姉の子ども…3人分を何でも送ってくる。どれもボロボロで(笑)」
とはいえ、夫の母親に文句をつけるわけにはいきません。使えないものをもらってお礼を送るのが、なんとはなしにしゃくに障っていました。
コロナ禍を理由に帰省していませんでしたが、今年のお正月は夫が「たまには帰るか」と言い出し、渋々、ルリさんもついていくことに。
「夫の実家って、妻にとってはアウェイですよね。しかも私は結婚前に挨拶に行ったのと、結婚後に 1、2回行ったくらい」
実家に着くとすぐ、義姉にキッチンに呼ばれました。いきなりエプロンを渡されて台所仕事を手伝わされたのです。せめてお茶でも飲んで少し落ち着きたいところですが、座る間もなかったといいます。
「親戚一同が集まっていたので、手がたりなかったようです。女は台所へ。そういう決まりきった感じが嫌でしたが、“他人の家”だから仕方がない、と諦めました。
義母は私の息子を抱きしめて離さない。かわいがってくれていると、いい方向に考えることにしました」
しばらくたって、ようやくキッチンでひと息つくと、夫の姿が見当たりませんでした。
帰ってこない夫に口うるさい義母と義姉
「どこにいるの?と夫に LINEを送ると、『悪い、友だちから連絡が来てさ、ちょっと行ってくる』と。
私をアウェイに置き去りにするの?という心境でした。すぐ帰るからとメッセージが来ましたが、その時点で午後3時。
夕方になって夕飯の準備となったときも帰ってこない。電話にも出ない。どうしたらいいかわかりませんでした」
それなのに、義母と義姉は「夕飯はルリさんに任せるわ」と言い出しました。おせちに飽きたから何でもいいと言われましたが、何でもいいというのは困りもの。
「“おせちに飽きたらカレーですよねー”と、冗談っぽく言ってみましたが、見事にスルー(笑)。“献立だけ考えてください”と懇願すると、義母が“さっぱりとうどんでいいわ”と。
出汁のきいたおつゆを作ってと言われたので、かつお節や昆布を探して右往左往。乾物類がありそうな棚を見たけど、インスタント出汁しかない。ああ、そうだった、義母はそれが好きなんだ、と思い当たりました」
つゆを作っていると義姉がやってきて「何してるの。うどんのつゆをインスタント出汁で作るってどういうこと?」と騒ぎ出しました。
「“すみません、ごめんなさい”を連発するしかありませんでした。『料理できないの?』とまで言われて。
その後、居間で、『まったくいまどきの人は…』なんて言っているのが聞こえてきて、いたたまれなかったです」
次に義実家に行くとき「私は素を出すべき?」
深夜になるとようやく夫が帰宅しましたが、まっすぐ歩けないほど酩酊。「あんまり楽しくてさあ、ごめん」と言う夫に、彼女は一瞬、殺意さえ覚えたそうです。
「私を放り出した夫にも、いじめとしか思えない発言を繰り返す義母や義姉にも腹が立ちました。義実家ではどう振る舞ったらいいかわからない。
夫はお盆も帰りたがっているのですが、もうあんな思いをするのは嫌。きっちり言いたいことを言うべきか、むしろ行かずにすませるべきか。これから作戦を練るつもりです」
お互いを理解できていない状態で、遠くに住んでいる嫁はどこか肩身が狭いもの。義母や義姉を嫌うわけではないけれど、もっと楽に接するにはどうしたらいいか、ルリさんはゆっくり考えるつもりだそうです。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里