「役者の仕事はなかなか子どもたちに理解してもらえないんです」と話すのは、俳優・脚本家・演出家など、さまざまな分野で活躍する池田鉄洋さん。演劇も子育てもうまくいかない共通点があるようで、でもそれが創作活動のヒントになっているそうです。
仕事も子育ても「叱ることより認めることから始める」
── 仕事と子育てに共通点を感じるところはありますか?
池田さん:「人を育てる」という意味では、似ている部分があるなと感じます。
これまで演劇の世界では、芝居の稽古中に怒号が飛びかうのが当たり前の光景でしたが、いまではパワハラとして問題視されるようになってきました。
そもそも相手がうまくできないからといって、一方的に叱り飛ばすのは違うんじゃないかと思うんです。
その人のポテンシャルを引き出せなかった自分の力不足に目を向けるべきだし、相手が理解できるように伝える努力が必要。殺伐とした雰囲気のなかでは、みんなが萎縮して意見が言えなくなってしまいます。
私は演出家でもありますが、稽古が始まる前の挨拶では「お願いがあります。私には至らないところがたくさんあるので、みなさんの力を貸してください。一緒におもしろいものをつくっていきましょう」と伝えています。
── 舐められたくないからと、威圧感を与えて従わせようとするタイプの上司もいますよね。
池田さん:たしかに、「そんなことをすると威厳がなくなっちゃうよ」という人もいますが、舐められたって構わないと思っています。そんな経験も散々してきましたよ。
それよりも、自由に意見を言い合ってみんなで一緒につくり上げていくほうが、熱量があっておもしろい作品になると実感しています。
それぞれが自由に表現すると、うまく手綱をひいてカタチにしていく別の難しさはありますが、楽しい現場のほうがやっぱりみんな生き生きしますよね。
子育ても同じだと思うんです。子どもたちが好きで楽しいことをできるだけ自由にやらせてあげる。
でも、間違わないように親としてしっかり見守りながら、はみ出しすぎたら軌道修正していく。そういう気持ちで関わっています。