電車の待ち時間「スマホを見なくなりました」

── では、今後もずっと山口県に住み続ける予定ですか?

 

京子さん:将来のことはまだわかりませんが、もともと“骨をうずめよう”と決めた覚悟の移住ではありません。縁があればさもありなんと思っています。

 

移住は“面白そうだから、住んでみよう”で最初は十分かと。“新しいことに挑戦したい、好奇心や情熱のおもむくまま好きなことをやりたい”と我が家も一歩踏み出しました。

 

住んでみて家族と相談して「違うな」と思えば、また次を考えればよいかなと。

 

── たしかに、住んでダメならまた移ればいいと考えられたら楽ですね。そんな京子さんの考える“移住の秘訣”は?

 

京子さん:自分たちが目指す生活イメージと、現実をすりあわせることでしょうか。

 

私たちの住まいは、山口市内でも交通の便が良い駅から徒歩6分、2LDK賃貸マンション。新幹線の新山口駅や山口宇部空港へもアクセスしやすいです。

 

地方移住は車が必須と思われがちですが、いまのところ車がなくてもどこにでも行ける生活を送っています。

 

金子みすゞゆかりの地・山口県長門市通の漁港へ長男と

私たちは「東京への行き来がしやすい」「新天地」「文化の薫りがする」、あとは直感で山口市を選びました。

 

親がイキイキしていれば、子どもものびのび。よって子育てしやすい環境となるのではないでしょうか。

 

移住を検討されている方は自分の希望にあわせて、このあたりあまり欲張らずに微調整できるといいですよね。

 

── 地方で車なし、2LDK賃貸マンション住まいだと生活のための出費が抑えられるのでは?

 

京子さん:東京暮らしの半分で暮らせていますね。正直、東京と山口を飛行機で行き来すると、寄席の出演料だけのときはマイナスです。

 

でも、都内在住のときよりも地方での住宅コストは低くて済むので、できたゆとりを新しい挑戦にあてたり、考え方次第かと。

 

── 仕事と家族の両方にとって、移住は大正解だったんですね。

 

京子さん:私の場合は移住してよかった。時間や心の余裕は、東京一拠点の生活時とは段違いです。

 

たとえば地方の電車は本数が少ないので、駅で次の電車を20~30分待つこともよくあります。

 

山手線ではすぐスマホを見てしまいますが、山口ではぼーっと美しい景色を眺めています。「こんなに美しい風景をひとり占めしていいの?」って、毎回感動しちゃうんですよねぇ。

 

 “風土”という言葉がありますね。これは山口の方から教わったのですが、“土”はもともとその土地に根づいている人々、土着の習慣。でも、それだけだと煮詰まってしまう。

 

“風”として外部から訪れる移住者や旅人が、新しい文化や活気を招き入れて、その土地は活性化されるとおっしゃいます。

 

文化も時代も新風と伝統で作られる。おこがましいですが、私たちもその一助になれたら幸せです。

 

PROFILE 神田京子さん

岐阜県出身。1999年2代目神田山陽に入門、2014年真打昇進。令和3年度文化庁芸術祭賞優秀賞、岐阜県芸術文化奨励賞受賞。2020年、山口県に移住。3月12日(日)横浜にぎわい座にて独演会を予定。

 

取材・文/岡本聡子 画像提供/神田京子