気持ちを伝えられるようになった子どもたち

自分のアバターを使い、オンライン上の居場所に参加

── オンライン支援プログラムには、「おしゃべりプログラム」があるとお伺いしましたが、具体的にどんなことをするんでしょうか?

 

松居さん:たとえば「サークルタイム」といって、毎日、朝の会、夕方の会のようにみんなで集まる時間があります。そこで、今日の元気度はどうか、心と体の調子はどうか、と聞いたうえで、それぞれの子どもが自分の気持ちを伝えるんです。

 

また、集団プログラムのひとつにみんなで同じ動画などを見ながら「こういうとき、自分だったらどう考える?」と、自分の気持ちを言葉で表す練習をするプログラムもあります。

 

不登校のお子さんは、自分の気持ちに蓋をしてしまったり、自分に対して厳しすぎることもあります。そこで、動画などを通して自分の気持ちを人に伝える練習をしていきます。

 

── 内に秘めている思いも、徐々に吐き出せていくのでしょうか?

 

松居さん:プログラムに毎回出ていると、「実はね…」といった感じで、自分のことも少しずつ話してくれる子が出てきます。どうして学校に行かなくなったのか。何が嫌だったのか。ポロッとみんなにシェアしてくれることもあるんですよ。親御さんもそこで初めて聞くこともあって、驚かれる方もいましたが、子どもの成長をすごく喜んでくれました。

 

同年代で集団プログラムを進めていくのは、大きな意義があると感じています。

 

また、子どもの表現力があがってくると言語能力があがり、その結果、成績向上につながった子もいます。そういった意味でも、子どもが自分の気持ちをしっかりと言葉で伝えられるようになることは大事だと思います。

子どもだけじゃなく保護者のサポートも必要!

少しずつ気持ちを吐き出せた子もいます

── 保護者同士で話す会があるそうですね。

 

松居さん:不登校で悩んでいるのは、子どもだけではなく保護者の方も同じだと思います。同じ状況の保護者とつながることで、気持ちを吐き出せたり、情報交換の場にもなっているようです。同じ不登校の子どもを持つ保護者と他愛ない話をすることで安心したと話す人もいます。また「高校進学を見据えて奨学金をどうするか」など、具体的なテーマを設定して、専門家の方にお話いただくこともありますね。

 

子どものケアだけではなく、保護者同士のつながりも作っていくことで、保護者自身の孤立感が緩和されるのではないかと思います。子どもはとても敏感で、保護者の方が不安に思っているとそれが子どもに伝わることもあると思います。逆に、保護者の方が気持ちに余裕を持てるようになると、子どもにもいい変化が見られることを期待できるのではないかと思います。

 

PROFILE 認定NPO法人カタリバ

認定特定非営利活動法人カタリバ。中高生にとって、親や教師(タテ)でもない、友だち(ヨコ)でもない、少し年上の先輩などの「ナナメの関係」を重視している。

 

取材・文/間野由利子