認定NPO法人カタリバでは、自治体と連携し、子どもたちに学びと居場所を届けるためにオンライン不登校支援を行っています。このプロジェクトを通して、子どもや親にどんな変化があったのでしょうか?カタリバの松居彩花さんに聞きました。

ゲーム感覚で取り組める

── 2021年、不登校の子どもたちが自宅にいながらオンライン上で支援が受けられる「オンライン不登校支援プログラム」がスタートしました。自宅にいながら学べる学習系のプログラムや対人スキルやコミュニケーション力をはぐくむプログラムなど、さまざまなプログラムがあるなかで、子どもたちにはどんな変化がありましたか?

 

松居さん:オンライン不登校支援が始まった当初は、Zoomでサポートを行っていました。ただ、そもそもZoomに慣れていない子どもが多く、オンライン上のプログラムに対しても、様子見でいる子もたくさんいました。

 

しかし、途中からオンラインで集まる場所をZoomから仮想空間「メタバース」に切り替えると、少しずつ子どもの参加数が増えていきました。

 

タブレットでオンライン上に作られた学校にアクセスし、授業を受けたり、友達と会話できる

── メタバースだと、子どもたちもゲーム感覚で参加しやすかったのでしょうか?

 

松居さん:もともと、ゲームを通してメタバースに慣れている子もいましたし、Zoomに比べて気軽に参加しやすかったのかもしれません。

 

メタバース内では、「アバター」というキャラクターを自分自身の分身として使います。アバターを介して、オンライン上でプログラムに参加したり、プログラムを実施するスペースで友達と会話を楽しんだり。アバターを操作することで、まるで自分が行動したように思えて、気持ちが前向きになる子もいるんですよ。

 

現実世界の学校にはなかなか足が向かないけれど、メタバース空間だったらハードルも低そう、他の子たちとも仲良くなれそうだと思って入ってくる子もいます。まずはアバターを介して、交友関係に慣れていくのもいいと思いますね。

 

── 印象に残っている子どもの変化はありますか?

 

松居さん:以前、長い間不登校だった中学生で、カタリバのオンライン支援プログラムに参加するようになってから、週1回程度、学校に行けるようになった子がいました。さらに、学校で仲のいい友達もできたようで、週末には友達と一緒に遊びに行くこともあるそうです。

 

よく「オンラインばかりであそんでいたら、リアルな人間関係が築けないんじゃないか」という人もいますが、子どもたちを見ているとそんなことは全くないと感じます。

 

ほかにも、昼夜逆転だった生活がオンライン不登校支援プログラムがあるから、朝起きられるようになった。規則正しく生活できるようになったという子もいます。

 

あるいは、集団のなかに入っていくのが苦手な子もいましたが、オンラインプログラムを経て徐々に友達と話すようになってきた子もいますよ。

 

── ちなみに、子どもへの想いが強い分、なかには「このプログラムを受講することで、不登校の子どもが学校に通えるようになるのではないか」と保護者の方が過剰に期待してしまうことはありませんか?

 

松居さん:保護者の方の期待が大きすぎて、子どもの気持ちがそこまで追いついていない場合もあります。急な変化を期待するよりも、まずは子どもが安心していられる「居場所」づくりと、無理のない程度で学習面でもサポートをしていけるといいかなと思います。