子どもたちが未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、さまざまな教育活動に取り組む認定NPO法人カタリバでは、いくつかの自治体と連携し、メタバースを活用して不登校の子どもたちをサポートする「オンライン不登校支援プログラム」を実施しています。初めての場が苦手、パソコンの前に長時間座っていられない、などさまざまな子どもがいるなかで、どのように支援を進めているのでしょうか。カタリバの加賀谷悠さんにお話を伺いました。

オンライン上で「学び」と「居場所づくり」

──「認定NPO法人カタリバ」では、これまでさまざまな環境下にいる全国の10代の若者に対して、魅力的なプログラムを数多く展開してきました。2021年からオンライン不登校支援プログラムを始めたそうですが、オンライン不登校支援プログラムが始まった経緯について、教えてください。

 

加賀谷さん:2020年3月、新型コロナウィルス感染症対策のため、全国の学校が一斉休校になったのを機に、オンラインによる学習・居場所支援を開始しました。

 

しばらくして一斉休校は徐々に解除されましたが、通常の学校生活に戻る子どもたちがいる一方で、不登校の子どもたちにとっては、オンラインプログラムのニーズが高いことがわかってきました。

 

そこで、2021年から様々な理由から学校に行きづらい、学校や各自治体の教育支援センター等、今はまだリアルの場に出向くエネルギーが少ない児童生徒とその家族に対しての支援として、メタバースを活用したオンライン不登校支援プロジェクトをスタート。

 

このプロジェクトは、経済産業省が2018年から始めた、これからを担う子どもたちの能力育成のため、EdTech(教育現場にテクノロジーを取り入れ、さまざまなイノベーションを起こす動きやサービスのこと)などを活用した教育・新しい学び方を実証する「未来の教室」実証事業にも採択されるなど、「新しい学びの形」としても注目を集めています。

 

さまざまな理由で学校に行けない子どもをサポート

── 具体的には、どのようなことをしますか?

 

加賀谷さん:子ども一人ひとりにメンターがついて面談を行うほか、個々人のペースや希望に合わせて学習プログラムやクラブ活動なども行います。

 

たとえば「学習系プログラム」では、AI教材を活用して国語や算数など5教科を学んだり、プログラミング教材を活用してゲーム感覚で理科を学んだりします。他にも、コミュニケーションを重視したプログラムも実施しています。

 

集団で行う学習プログラムは1コマ45分で、スタッフが子どもと1対1で行う面談は1コマ30分になります。

 

── パソコンが苦手だったり、30分も座っていられない子もいるのでしょうか。

 

加賀谷さん:パソコンの操作が難しいお子さん、長く座っているのが苦手なお子さんに関しては、保護者の方にサポートしていただく場合もあります。まずは、子どもの気持や集中力が続くところから始めて、少しずつ30分に近づけていきます。

 

── 人見知りする子や、打ち解けるのに時間がかかる子でも大丈夫でしょうか?

 

加賀谷さん:オンラインとはいえ、初めての場で緊張する子ももちろんいます。そんなときは、ゲームやお話をしてリラックスしてもらうように努めていますね。「今度はこれをやってみたい…!」など、子どもから徐々に意欲が見られるようになってきたら「今日は英語の勉強をしてみようか」など、子どものペースに合わせて学習面でのプログラムも取り入れていきます。