「作って終わりじゃない」触れてもらって作品になる

── ニシユキさんの顔出し看板は、2Dにも関わらず迫力があります。制作する際のこだわりなどはあるのでしょうか。

 

ニシユキさん:2Dの仏像ですが、立体的に見せることにはこだわっています。

 

仏画だと陰影はつけないルールがあるらしいのですが、私の場合、まるでそこに仏様がいるかのように再現したいので陰影をつけています。

 

化仏(背景に貼り付けられた小さな仏さま)を立体的に見せた作品

また、最後に顔は全部くり抜くのですが、目も鼻も口もすべて一度書いているんですよ。

 

「くり抜くのになんで顔を描くの?」とよく言われるんですけど、顔を描いたほうがバランスがとれて断然作りやすいんです。

 

── 最後に顔をくり抜いて、作品は完成ですか?

 

ニシユキさん:いいえ。私の作品はお客さんに顔をはめてもらって、初めて作品が完成します。

 

仏画の世界では最後に“目”を入れることで、“魂”が入って画が完成すると言われています。それと同じように考えれば、仏像顔出し看板の完成は「人の顔」をはめることなんです。

 

── 2D仏像顔出し看板は、お客さんありきの作品なんですね。ニシユキさんは地元・岡山や関西圏を中心にいろんなイベントに出展されていますが、お客さんとの印象的な思い出はありますか?

 

ニシユキさん:ショッピングモールにブースを出展したことがあるんですが、大勢の観光客や地元の買い物客が目の前を通っていくんですよ。

 

そのなかで、私の作品を見た一人の女性が掛けてくれた言葉が印象に残っています。

 

「今日観た映画がとても衝撃的な内容だったけれど、それを超える衝撃でした。ありがとうございます」と言って、お礼にフルーツをくださったんです(笑)。

 

イベントで「仏像体験」をする参加者

イベントに出展すると、こういった出会いが生まれます。

 

私のアートのテーマは「コミュニケーション」なので、仏像顔出し看板を通して生まれたいろんな出会いが大切な思い出ですね。

 

── 作って終わりではなく、お客さんとのコミュニケーションも含めてニシユキさんの作品なのだと伝わる素敵なエピソードです。2023年は「2D仏像顔出し看板」10周年を迎えますね。

 

ニシユキさん:仏様が私にとって大切な存在であるように、誰の心なかにもきっと大切なものがあるはず。仏像顔出し看板を通して、お客さんにも「大切な何か」を思い出してもらえたらうれしいです。

 

これまでの10年間では看板を50体ほど作ったのですが、今後の目標は100体。それを達成できたら、また新しい世界が見えるんじゃないかとワクワクしています。


取材・文/白石果林 画像提供/ニシユキテン