感情が揺れたときに「続ける勇気」をくれた友人の言葉

── 「2D仏像顔出し看板」というニッチな分野で、10年も継続するのは大変なご苦労もあったのではと推察します。ここまで走り続けられた秘訣はあったのでしょうか。

 

ニシユキさん:自分でも、まさか10年も続けるとは思っていませんでした(笑)。

 

振り返ると、“細く長く”のスタンスだったから、あっという間に10周年を迎えられたのかなと思います。ムリせず、自分のワクワクを大切にしながら作ることを心がけてきましたから。

 

あとは友人たちからの言葉も大きかったです。

 

イベントで「仏像体験」をする参加者

── ご友人からの言葉ですか。

 

ニシユキさん:はい。細く長くとは言いつつも、同年代の人が活躍している姿を見ると嫉妬のような感情を抱くことはありました。

 

そんな気持ちを友人に打ち明けたら「比べるところが違うんじゃないか」と言われて。

 

「あなたは誰もやっていないことを少しずつ続けてきた。それで取材されたり、イベントに招かれたり、個展を開いたり、それはすごいことなんだよ」と、続けていく勇気をもらいました。

 

それからは、マイナスな気持ちも何か大事なことに気づかせてくれるチャンスなんだと捉えるようになりましたね。

 

── ほかに印象に残っているご友人の言葉はありますか?

 

ニシユキさん:ずっと応援してくれている長年の友人がいるんですが、彼女がある日、私の作品を見て「なんかおもしろみがないね」とポロっと言ったことがあって。

 

「ずっと見てきてくれた彼女にそんなこと思わせるんだったら、もっと頑張らないといけない」と思えたんですよね。

 

それでできたのが、光背の化仏(仏像の背景にある小さな仏様)一つひとつを立体的に見せた作品です。この作品は、友人のひと言がなければ生まれていませんでした。

 

化仏(背景に貼り付けられた小さな仏様)を立体的に見せた作品

── 周囲の人からの言葉が制作意欲につながっている。ニシユキさんのアートのテーマである「コミュニケーション」を体現されたんですね。

 

ニシユキさん:ありがとうございます。これからも、ワクワクしてくれる人が一人でもいる限り「仏像体験」をしてもらえる場所に出続けたいと思っています。

 

寺やイベント、個展など場所はさまざまですが、仏像顔出し看板によってその場が明るくなったり、コミュニケーションや喜び、驚きが生まれたりする。そんなツールになることを願って、制作し続けていきたいです。


取材・文/白石果林 画像提供/ニシユキテン