「2D仏像顔出し看板」という類を見ない発想で、注目を集めるアーティストのニシユキさん。やっている本人も周囲もワクワクするような活動の原点について聞きました。

 

2D仏像顔出し看板「帝釈天」を顔にハメたニシユキさん

「着ぐるみ活動10年」お客さんから「私もやりたい」

── “2D仏像顔出し看板”アーティストとして、現在どのような活動をされていますか。

 

ニシユキさん:板段ボールにアクリル絵の具で仏像を描き、「移動可能な顔出し看板」を制作しています。

 

日本各地で開催されるイベントへの出展や個展の開催のほか、お寺から依頼を受けて看板を作ることもありますね。

 

仏像にちなんだグッズ制作もしていて、ボールペンやICケース、キーホルダーなどを販売しています。

 

── 2D仏像顔出し看板を作り始めて10年目に突入するニシユキさんですが、以前はどのような活動をされていたのでしょうか。

 

ニシユキさん:仏像顔出し看板を作る前は、ハチや犬、力士の着ぐるみを着た自分をモチーフに、カレンダーなどのグッズを制作していました。

 

美術館や博物館で学芸員として働くかたわらで、10年ほど続けていました。

 

着ぐるみ活動では“若手の登竜門”といわれる『GEISAI』にも出展

──「2D仏像顔出し看板」もそうですが、何かに“変身”するのがニシユキさんのアートなんですね。

 

ニシユキさん:そうですね。一般的なアート作品のように自分の世界観を表現するのではなく、自分の作ったもので、人を楽しませたり、笑わせたり、驚かせたりしたかった。

 

周囲との「コミュニケーション」を生むツールを作りたくて始めたのが、何かに変身することでした。

 

── それで着ぐるみ活動が始まったと。10年続けた着ぐるみ活動から、「仏像顔出し看板」に転換したきっかけは何だったのでしょうか。

 

ニシユキさん:着ぐるみにはサイズがありますから、自分しか変身できません。お客さんから「自分もその姿になりたい」と声をかけられて、体験してもらう方法がないことに気づきました。

 

なんとか参加者にも「変身」してもらえないかと考えていたとき、観光地にあるような“顔出し看板”を作れば、誰でも変身できると思いついて。

 

顔・体・背景のバランスを取るため、5センチ角のラインを引いてから下絵を描く

ただ、一般的な顔出し看板だと世の中にあふれているし、私が作る必要性もない。おもしろみに欠けるんですよね。

 

何かがたりない…と考えて出した答えが、「移動できる」顔出し看板。これなら、他にはない、私ならではのアートができると思いました。

 

イベント会場で「2D仏像顔出し看板」を装着した私が練り歩いたら、すれ違う人はどんな反応をするだろうと想像してワクワクしたんです。