2022年度に日本の女子大学として初めて工学部を設立した奈良女子大学。先駆者として整えた学習環境は、柔軟なカリキュラムやコーチング制度などかつての工学部とは一線を画します。「工学は未来を創造する学問」と話す同大学工学部長の藤田盟児さんに、同学部の学びのあり方についてうかがいました。

ジャンルを横断して自在に学べるカリキュラム

── 20世紀までの「力の工学」ではなく、「知の工学」を目指す奈良女子大学工学部。「機械」「電気工学」などの専攻コースを設けていないのが特徴的です。

 

藤田さん:工学は、技術を使って未来を創造する学問です。基礎的な工学知識はもちろん必要ですが、未来志向の学問だからこそ、従来の工学部の専攻が今後も必要かどうかは変化しています。

 

そして、それを決めるのは、人と社会。

 

であれば、学びのスタートは人と社会であるべき。学生が取り組みたいと思うこと、課題を見つけるところから始めるのがこれからの工学のあり方だと考えました。

 

入学してまずは工学の基礎と幅広い教養を学習し、いずれは自分で専門分野や研究テーマを選べるようになることを目指します。

 

学べる分野は大きく分けてふたつあり、「人間情報分野」と「環境デザイン分野」があります。人間情報分野では生体医工学系(生体情報計測、福祉工学など)と情報系(プログラミング、センシングなど)、環境デザイン分野では環境デザイン系(環境、建築、造形デザインなど)と材料系(有機、無機、物理化学・高分子など)を学ぶことができます。

 

これらを、分野をまたがって、好きなものをピックアップし、組み合わせることができます。

 

柔軟なカリキュラムにより、学生は志向にあった学びが可能に