18歳に施設を巣立つ子どもが自立できるための施設も
── 今回、一緒に新設された自立支援棟についても教えてください。なぜ建てられたのでしょうか。
谷村園長:児童養護施設の子どもたちは18歳の誕生日を迎えた後の3月で退所することになっています。でも、ずっと施設で大勢に囲まれていた子どもが部屋を借りてひとりで暮らすのって、最初とても寂しいんですよ。
今回の自立支援棟は、そういった寂しさに慣れる練習として、また、まわりに頼れる力をつけてもらうためにつくりました。頼ること、助けてもらうことが自立の助けになると思ったからです。
頼れる人に頼らず、自己判断だけでやろうとすると、つい優しいほうにばかり進んでしまって、結果的に危険な目に遭うリスクも大きくなります。児童養護施設にいる間に、生きる力をつけられるようにまわりの大人たちが支える必要があるんです。
守山学園の自立支援棟では、ワンルームの部屋をつくり、自立を考えた年齢の子どもたちに仮住まいをさせる予定です。自分で簡単な食事くらい作れるようになること、困ったことがあったらまわりに相談できることを目標にしています。
守山学園の周辺にもアパートを建てているので、ここも利用しながら本当にひとりで生活できるかを見守っていきます。
「18歳で退所」に対する子どもたちのリアルボイス
── 子どもたちは18歳になると児童養護施設を退所しなければいけないのですか?
谷村園長:退所しなければいけないということはなく、必要な場合は22歳まではいられますが、ほとんどの子は施設にそのまま残りたいとは思わないようですね。やはりひとり暮らしを望む子が多いです。
現状では、原則18歳までとなっている年齢上限を撤廃する改正児童福祉法が2024年4月に施行されることが決まっていますが、子どもたちの声は若干違うと思っています。
子どもたちの想いに沿うと、基本的に18歳を迎えた後の3月にはひとり暮らしを始めているはずなんです。
── 18歳になったら、自分ひとりで生活したいと考える子が多いんですね。
谷村園長:自由になって、自分で頑張っていきたいという思いですね。そこで、何か困ったときには私たちに頼ってきてほしいんです。人が生きていくうえでは頼ったり頼られたりの関係が必要です。その練習を早い段階でして、安心してひとり暮らしができるようになってほしいと思っています。
── 18歳になって施設を巣立った子どもたちは、ひとり暮らしをした後も、施設などまわりとの関係は継続してもてるようにしているのでしょうか。
谷村園長:はい。まず20歳までは施設からバースデーカードを贈るなどして、関わりを続けています。
また、滋賀県では、社会的養護の子どもたちを社会で見守るための仕組みづくりに取り組んでいます。子どもが児童養護施設を巣立つときには、滋賀県の地域養護推進協議会にその子の名前などを報告して、何かあったときにも自治体をあげて支えられるようにしています。
まだ100%ではありませんが、子どもたちの視点を大切に少しずつ整えているところです。
取材・文/高梨真紀 写真提供/守山学園