滋賀県にある児童養護施設の守山学園は、クラウドファンディングで多くの人から寄付を受け、新しい園舎を建てました。そこには一時保護専用施設と自立支援施設棟が併設されています。「子どもたちを守るために絶対に必要」と話す谷村 太(たにむら・ふとし)園長に、創った理由などをお聞きしました。
虐待だと認めない親から子どもを保護する
── 昨年12月から新しい園舎で子どもたちの暮らしが始まったそうですね。一時保護専用施設を併設されたと聞きましたが、通常は児童相談所に併設されている場合が多いと思います。あえて児童養護施設に作ったのはなぜですか?
谷村園長:一時保護される子どもたちに責任はなくて、その背景には、親や社会にいろいろな課題があるんですよね。
たとえば、子どもたちは親御さんが自分を叩いたりするのをやめてほしかっただけ。でも、このまま親御さんと一緒に生活をしていては身の危険があるから、と一時保護されるという事情があります。
親御さんのなかには「しつけの範囲です」と言って、なかなか自分が虐待をしたとは認められない人もいる。そうすると家庭裁判所の案件になります。児童福祉法28条に基づいて、虐待だと認めない場合は、措置として子どもを一時保護する…こんなそのやりとりをしていると、完了するまで6か月以上かかるんです。
完了までの間、子どもたちはずっと一時保護所にいて、自由に外出もできない状態におかれます。子どもにとって、それはあまりにもかわいそうだし、窮屈でいやな思い出が長く続くことは良くないと思っています。
一方で、一時保護する場所が通常の児童相談所ではなく児童養護施設にあれば、学校への送迎が可能だから学校に通えるし、職員と外出もできるんです。
また、一時保護所に長期間預けられた子どもは学習の面で大きな遅れを取ってしまうことも多く、まだ掛け算や分数が習えていないといった例もあります。でも、そうなったのは子どものせいではないし、その状況をなくしたかった。それで「絶対、守山学園に一時保護専用施設をつくりたい」と思っていました。
── 守山学園の一時保護専用施設は今年4月から運営を開始されるそうですね。児童相談所が管轄する一時保護施設自体の数は全国的に不足しているのでしょうか。
谷村園長:全然たりていません。滋賀県内に児童相談所は3か所ありますが、一時保護所も3か所しかなく、満員状態です。絶対にもっと必要だと思います。