「先のことを考えて行動して」が通用しない

ひとつ屋根の下で暮らす家族だからといって、捉え方が同じとは限りません。ご相談内容からすると、鳥の目タイプの相談者さんは全体を見通すことが得意なので、平日にできない複数の家事を、休日にテキパキ計画的にこなしていますね。

 

そして、虫の目タイプのご主人は「今」目の前のことはよく見えるけれど、未来のことについては薄ぼやけていて見えない。だから深夜まで動画を見たりゲームをしたりして、目の前の楽しさに集中してしまうんです。

 

こうしたタイプの人に「先のことを考えて行動してよ」と言ってもなかなか伝わりづらいのです。これは、それぞれの個性みたいなものです。

本当に「気づかない」タイプの人もいる

相手との感覚の違いを知ることは大切です。「なんで分かってくれないの?」というモヤモヤが募るとイライラするだけですが、原因を知ると少しは「理解」につながります。

 

「分かってるくせにやらない」と考えると「察してよ」と思いますし、期待してしまいます。でもはなから「分かっていない」「気づいていない」というタイプの人も世の中にはいるということを知っておくと、家庭でも仕事でも何かといいかもしれません。

 

相談者さんのご主人の場合、悪気なく「今」しか見えていないタイプなのかもしれません。こうしたタイプの方は、「今」の楽しさを優先して集中するので、あまり先を考えません。そうなると、明日遅く起きるとどうなるか、というところまで考えが及ばないのだと思います。

 

夫婦で物事の捉え方が違うことがわかれば、大きな前進です。少しイライラが減るのではないでしょうか。そのうえで対処法を考えましょう。

 

一例として、「休日にやることリスト」を書き出すのも良いと思います。

 

リストには、重要度、優先順位を数字にして書くとより伝わりやすいです。たとえば「洗い物 90%」「作り置き 70%」「ペットボトルを捨てる 40%」といった感じです。

 

相談者さんのやりたいこと、やろうとしていることがご主人に伝わりやすくなるかと思います。それが伝わることで、ご主人も積極的に参加してくれるようになるとうれしいですね。


  
見える化して共有すること。それだけで相談者さん自身も休日の行動が見直せますし、気持ちも楽になると思います。イライラは疲れます。休日のたびにモヤモヤし続けるのはよくないですから、ぜひトライしてみてくださいね。

 

PROFILE 八木経弥さん

やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子 イラスト/まゆか!