「若いころは天狗になっていました。“ライブが盛り上がらないのはお客さんのせい”とか」。hitomiさんは、そんな自分が急に恥ずかしくなったそう。きっかけを与えてくれたのはマネージャーの言葉。年を重ねていくうちに染みるその言葉は、仕事にも育児にも通じるものでした。
「人のせいにせず自分を磨く」大切さに気づいた言葉
── リアリティのある歌詞の世界観がとても印象的です。心細さにそっと寄り添う表現だったり、励まされる力強い言葉だったり。曲作りのとき、大事にしていることはありますか。
hitomiさん:
「いまの自分のなかにある本当の気持ちを書くこと」を一番大切にしてきました。
ただ、人生経験や年代を重ねるとともにモノの見方や考え方も少しずつ変わってきていて、それが歌詞にも反映されていますね。
── たとえば、どんな変化でしょう?
hitomiさん:
デビューした当時は、世の中や大人に対する強い反発心があって、そのエネルギーを歌で表現してきました。
でも、経験を重ねるうちに、「戦う相手は他者ではなくて自分なんだな」と気づいて、「昨日の自分と競争する」感覚に切り替わっていきましたね。
── なにかきっかけがあったのですか?
hitomiさん:
最初にその感覚が芽生えたのは、20歳くらいのころ。当時の私は、不平不満でいっぱいで、いつも文句ばっかり言っていました。
ライブが盛り上がらなかったら、「今日のお客さんはノリがよくなかった」とお客さんのせいにしていたんです。
その態度に当時のマネージャーから、「人のせいにするんじゃない!ライブを盛り上げられなかったのはお前が悪い」と叱られました。
「自分の実力不足が原因なのに、周りのせいにして文句ばかり。それって、すごくカッコ悪いと思わない?」と言われて、ハッとしたんです。急に自分が恥ずかしくなりました。
そうしたことを繰り返すうちに、「すべては自分との戦いだから、私自身を鍛えて磨いていかないといけないな」と思うようになりましたね。