「車イスの乗り降りに関して、忘れられないできごとがあって…。と話すのはフリーアナウンサーの駒村多恵さん。要介護5の母親を連れて出かけた際に、あるトラブルに遭遇してしまったとか。(全5回中の5回)
車を停める障がい者スペースがない!
── 駒村さんのお母様は、現在要介護5とのこと。お母様とのお出かけの際には、障がい者スペースなどを徹底して調べてから出かけるそうですね。
駒村さん:
母を連れて出かける際には、常にエレベーターの位置はどこか。スロープはあるか。車なら、障がい者用駐車スペースがあるかなど、あらゆることを調べていきます。
── そんななか、忘れられないできごとがあったとか。どんなことがあったんですか…?
駒村さん:
行き違いから、結果的に障がい者用スペースではないところに車を停めたことで、タクシーの運転手さんにご迷惑をかけてしまい、怒られてしまったんです。
── 怒られた…?
駒村さん:
母を地元大阪の美容室に連れて行った日。母と40年のつき合いになる美容師さんが「車で新大阪まで送らせてください。そのつもりで車いす対応の車で来たから!」と申し出てくださったんです。
私は駅のエレベーターの位置や、車いすスペースがある電車の車両位置など、電車でスムーズに移動できるようにいろいろ調べていたんですが、「お母さんと、次いつ会えるかわからないし、少しでも長く一緒にいたいから…」という言葉に心を打たれ、甘えることにしました。
ただ、急な変更で、駅ターミナルのどこに障がい者用の乗降スペースがあるか、調べていなかったんですが、新大阪は大きな駅。着いてから誰かに聞けば、わかるだろうと高を括っていたんです。
駅手前で私だけ降りて、誘導員の方に「母が車いすなので、障がい者用スペースに車を停めて下ろしたいんですけど、どこにありますか?」と聞きに行くと「そういった場所はないので、ここに入って」と。指さされたところがタクシーレーンだったんです。
実は、タクシーレーンは一般車レーンに比べて駅の出入り口に近いところにあるんです。お礼を伝えてそのレーンに入ったのですが、進んでいくと、そこは一車線で、柵がしてあって、追い越せない構造になっていました。「本当にここで大丈夫なのかな?」と思いながら、車を停めて、できるだけ急いで母を降ろそうとしたんですが、やはり、それなりに時間がかかり、後続のタクシーを足止めすることに。
すると、タクシーの運転手さんから「何しとんじゃあああ、このクソババアーーーー!」と周囲に響き渡る大声で怒られてしまって。
運転している美容師さんは、母と同世代の当時70代。委縮して、完全に逆効果で、焦れば焦るほど、さらに手間取ってしまって。
私たちは、時間がかかることを見越して、あらかじめ障がい者用乗降スペースを聞いて、誘導員の方からタクシー専用レーンに入って車を停めるように指示され、足止めすることになると知らずに入ったわけです。しかし、タクシーの運転手さんからしたら、そんな事情は知らないんですよね。一般車両がタクシーレーンでモタモタして何やってるんだという話で、お怒りもごもっとも。
一方で、誘導員の方は、少しでも駅の出入り口に近い方が降ろしやすいだろうという我々に対する配慮の気持ちからの指示だったと思うのです。思惑の行き違いからトラブルになってしまい、なぜこんなことに…とやるせない気持ちになりました。
── もし、駒村さんが第三者としてこのような場面に遭遇したら、どう行動しますか?
駒村さん:
まずは駆け寄って手伝います。タクシーの運転手さんに「ちょっと待ってください」と伝えて、一刻も早く降ろします。あと、まわりにいる通行人に「お手伝いしてもらえませんか?」と声をかけるかもしれません。もう大反省。最初から駐車場に入れればよかった。