突発的な事態もあるけれど

雨の中、傘をさして移動中の駒村さん

── 介護をしていると突発的なこともありそうです。

 

駒村さん:
母の具合が悪くなって、救急車で運ばれたことがあって。そのときは、ケアマネジャーさんとヘルパーさんにお願いして勤務時間などを調整してもらいました。どうしようもなくて、母が入院したこともあります。介護は突発的なことも起こります。そのときにどう対処したらいいか、誰に何をお願いできるのか。常日頃から考えておくことが大切だと思います。

 

── 駒村さんは、介護福祉士と介護食士の資格も取られていますね。

 

駒村さん:
資格は、介護に必要な情報を知るための最短ルートだと思ったんです。

 

── とはいえ、仕事と介護、資格習得は相当大変だったのでは?

 

駒村さん:
スケジュール的にはかなりハードでした。介護福祉士の資格を取ったとき、朝5時20分から生放送がスタート。8時に番組が終わったらそのまま反省会。当時、9時半から特別養護老人ホームで介護福祉士の実技研修があったんですが、どうしても間に合わないので懇願して10時半スタートにしてもらいました。

 

研修終わりでロケに行ったりもしていたので、ひたすら走る、綱渡りの生活をしていました。ただ、これは私がたまたま早朝の番組を担当していたからできたこと。日中の仕事だったら研修時間と丸々重なってできなかったと思います。

 

── 介護をしてみて、発見はありましたか?

 

駒村さん:
テレビでは情報をお伝えする側でしたが、母の介護は情報を知りたい側に回りました。

 

そこで、母の困りごとについて調べる。ときにはセミナーに行って学んだことを、母にも実践してみる。

 

その結果、母の状態が良くなることも何度かありましたね。そうなると、母もハッピーだし、介護サービスのスタッフも、介護がラクになるんですね。

 

私は仕事柄もありますが、自分で調べることが好きなんです。何かひとつでも発見があると楽しい。何ができるか、改善策を考える楽しみが、在宅介護にはあるんです。

 

あとは、ずっと生放送の現場にいるので、タイムスケジュールも逆算思考で考えています。これも、今の仕事が生かされているのかなと思いますね。

 

── お話を聞いていると、「介護は特別なもの」ではなく、今やっている仕事の延長にあるんですね。

 

駒村さん:
おっしゃる通りです。私は器用なタイプではないので、仕事も介護も、考え方は全部一緒です。

 

「介護=大変」と思う人も多いでしょう。でも、実際は辛いばかりではなくて、自分なりに工夫してみると、うまくいったときとかすごく嬉しい。「やったね!」って思います。そんなささやかなことに喜びを感じられるのも、介護を通じてわかりました。

 

PROFILE 駒村多恵さん

フリーアナウンサーとして、NHK「あさイチ」のサブキャスターを務める。仕事を続けながら、在宅介護で要介護5の母親の面倒を見る。より専門的な知識をつけるために介護福祉士と介護食士の資格を取得。

 

取材・文/間野由利子