局の正社員は考えなった

── テレビ局の正社員になろうと思ったことはありますか?

 

駒村さん:
アナウンサーの仕事は、就職活動の時点から倍率が高くて。養成スクールにも通ったことがない私が、入れるわけないと思い選択肢にはなかったです。

 

ただ、オリンピックの準備期間中にNHKの帯番組のMCのオーディションを受けたら、オリンピック取材期間中に「合格」の連絡があったんです。

 

その後、4月から1年間は、毎日NHKで生放送する役割をもらえました。嬉しかったですね。

 

── オリンピックの次はNHKのMCとは、すごいですね。

 

駒村さん:
ただ、そのときも当然、民放も含め、番組でMCの経験はゼロ。アナウンサーとしての基礎もわかっていなかったため、「原稿読みを練習したほうがいいよね」とデスクから言われ。

 

その方の推薦で、当時NHK『その時歴史が動いた』などに出演していた松平定知アナウンサー主催のニュース読みの勉強会に入れてもらったんです。松平さんが一人ひとりの読みにアドバイスをくださるというもので、当初は週1で。

 

NHKから民放に職場が移っても「やる気があるなら、いつでも来ていいよ」とのご厚意で、行けるときだけですが、7~8年通い、たくさん学ばせてもらいました。自分の実力だけではもちろんなくて、今ある仕事は人に恵まれていたことが大きかったと思います。

 

── 駒村さんが、ずっとフリーアナウンサーとして活躍が続くのはなぜだと思いますか?

 

駒村さん:
やっぱり、人との出会いが大きいと思います。同時に、目の前のことに真剣に取り組む。ひたすらコツコツ真面目に調べる。一見すると遠回りや不必要に思えることも、結果として知識がついて、仕事にも生かせる。また同時に、その姿を見て応援してくれた人もいます。

 

アイドル時代の経験も、辞めて作曲・編曲を学んだことも、成功とはいえない体験でも一生懸命取り組んでいたから、のちに、その経験が生きたことが多いです。

 

たとえば、山下達郎さんや宇多田ヒカルさん、Mr.childrenなど、トップアーティストに楽曲制作についてインタビューするラジオ番組を11年半続けられたのは、過去に一生懸命取り組んだ音楽経験が無自覚のうちにきっと身になっていたから。

 

やりたいかやりたくないかよりも、まずは目の前のことに全力で取り組む。これで道が拓けていったように思います。

 

PROFILE 駒村多恵さん

フリーアナウンサーとして、NHK「あさイチ」のサブキャスターを務める。仕事を続けながら、在宅介護で要介護5の母親の面倒を見る。より専門的な知識をつけるために介護福祉士と介護食士の資格を取得。

 

取材・文/間野由利子