産後働き続ける女性がまだ少なかった25年前、子連れ出勤を提唱し、実際に働く場を作り出した女性がいました。授乳服の製造・販売事業で、女性のみならず、世間からの注目も集めたモーハウス代表の光畑由佳さんです。光畑さんはどのような思いで事業を育てていったのか。その強くしなやかなマインドは、私たちを勇気づけてくれます。

「マイナスをプラスに変える」授乳服

── 今でこそ授乳服のバリエーションは増えましたが、当時「肌を見せずに授乳できる授乳服」は画期的でした。起業のきっかけは?

 

光畑さん:
私自身の育児体験です。電車のなかで生後1か月だったわが子が泣き出し、やむなく電車内で授乳することになったのですが、周りの視線を気にしながらの授乳は、恥ずかしかった。

 

同時に、授乳は自然な行為のはずなのに、ママたちの行動を縛っていることに違和感も覚えました。その延長線上で、女性が出産・育児をためらったり、あるいは出産後に働くことをやめてしまったりすることも残念に感じました。

 

自身の体験が授乳服事業立ち上げのきっかけに

そこで、いつでもどこでも肌を見せずに授乳ができる服を作って、ママたちが赤ちゃんを連れて自由に外で活動できるようにしようと思い立ちました。

 

そうして、着物の構造などを参考にしながら、Tシャツの両脇にスリットを入れてそこから授乳できるタイプなど、何種類かの授乳服を考案しました。

 

── 実は、私自身、モーハウスの授乳服にはお世話になりました。外出先でも気軽にサッと母乳をあげられるので、出かける際に、哺乳瓶や粉ミルク、お湯などを用意せずにすむようになりました。外出がラクになり、重宝したことを覚えています。

 

光畑さん:
開発した当時は「外出時の授乳のしづらさを解消する、マイナスを軽減する商品」という意識だったのですが、私自身も実際に利用してみると、外出の回数が増え、それによっていろいろな人とのふれあいも増え、新しい世界がどんどん広がりました。

 

心のどこかで「子育て中であることはハンディキャップになる」と思っていたのがひっくり返った。授乳服は「マイナスをゼロにする」どころか「プラスにする」と感じました。

 

授乳のイメージを覆したモーハウスの授乳服