不登校の子どもの数が近年増加するなか、「学校に行かないと決めた子どもたち」の新しい居場所「トーキョーコーヒー」が全国で急増しています。8月に奈良県生駒市で始まり、3か月で全国196か所まで増えました。保護者が笑顔で楽しむことで、一緒に訪れた子どもたちも楽しめる活動を行っています。プロジェクトリーダーの阿野晃秀さんにお話を伺いました。

 

笑顔で取材に応じてくれたリーダーの阿野さん

登校拒否を「かっこいい」イメージに

── トーキョーコーヒーの名前は「トーコーキョーヒー(登校拒否)」のアナグラムとのこと。アナグラムにした由来を教えてください。

 

阿野さん:
不登校の子を支援するという真面目なイメージより、スタイリッシュなイメージを作ろうと考えました。「登校拒否」ってマイナスイメージがあるけれど、個性なんだとプラスに受け止めて欲しいと思いました。活動に参加するときも「かっこいい」と思って欲しいと考え、クールなイメージをアナグラムでつけたいと代表の吉田田タカシとスタッフで作りました。

 

代表の吉田田さん

今の学校システムを変えたい

── どうしてトーキョーコーヒーを始めようと思われたのでしょうか。

 

阿野さん:
今年8月に活動は始まりましたが、その1年ぐらい前からMITERIという活動をスタートしていました。MITERIは奈良県生駒市の山裾にある家を買い取って、そこを自由にリフォームする活動です。大人が楽しんでリフォームや畑仕事、山仕事に取り組みました。

 

リフォームの様子

そこで大人がDIYを楽しんでいる横で、子どもたちが楽しく遊んでいたんですね。その姿をみて、代表が「ひらめいた!」と。子どものための居場所をつくるのではなく、大人が楽しめる活動の場をつくることで、一緒にいる子どもも安心できるんじゃないかという発想になったんです。

 

子どものために用意された場所では、良くも悪くも大人の関心が子どもに向きすぎていて、子供たちは逆に居心地が悪いこともあるんですね。大人自身が楽しんでいる場所、一見すると大人のために見える場所で「子どもも、いてもいいよ」といわれると、子どもはリラックスできるんだと気づいたんです。元々は大人の活動の場なので、子どもは何も強制されることがなく、ありのままの自分が許されているように感じ、安心感を感じることができます。

 

大人が見守るなか、機械に触れて関心を持つ子どもたち

代表はこれまでアトリエe.f.t.という子どもたちにアートを教える活動もしていて、そこには不登校の子も通っていました。芸大を目指す子たちのなかには個性的な子もいて、画一的な現在の学校教育が合わないと感じる子どももいたんですね。アトリエの活動のなかで、代表は長年、現代の画一的な教育の在り方に問題意識を持っていました。

 

私自身は1年半前からアトリエに関わっていて、そこでの子どもたちとの接し方が評価されてリーダーにと声をかけていただきました。

 

私は学校に通っていましたが、たまたま学校に耐えられただけで、周りと同じことを強制される環境が生きにくかった感覚があります。また競争を煽られ続けたことで深いところで自信を失ったり、傷ついたりしながら大人になった気がします。

 

── 今の学校の課題はなんだと思いますか。

 

阿野さん:
型にはまった「正解」みたいなものがあります。代表が「正解信仰」と呼ぶ「何か正解がある前提でそれをひたすら詰め込んでいく教育システム」が学校にあると感じています。

 

また、みんなが足並みをそろえて「同じ」ことを強制させられるシステムも課題ですね。全員が同じことを同じ時期にできるように促され、同じような進路に誘導されると、そこに合わない子どもにとっては辛いと思います。

 


さらに学年が上がれば、偏差値が高い学校に行くことがいいという考えがまだ残っていて。そんな教育から抜け出せていないと思います。

 

偏差値偏重ではなく、子どもが個性を伸ばし、安心して過ごせる教育にシフトしていきたいと思いましたし、トーキョーコーヒーがそんな場所になればと思っています。

 

木を懸命に運ぶ子どもの様子

子どもが安心して過ごせるというのは、そのままで、そこにいていいと認められることです。そんな環境で、自己肯定感は育まれます。人間は自然と個性に応じた意欲がわいてくると考えられていて、大人が無理に教えなくても勝手に子どもが関心あることを見つけて、伸びていくだろうと考えています。

 

子どもにスキルや知識を教えこんで生きていく力をつけさせるというよりも、子どもの本来持っている力を失わせない」ということが大切だと考えています。