近年、ニュースでよく話題にのぼる「あおり運転」。他人事とはいえず、「もし自分があおられたらどうしよう…」と心配な人もいるでしょう。該当する危険な違反行為や罰則、事前の防御策、万が一被害に遭った場合の対処法などを鬼沢健士弁護士に聞きました。
あおり運転で「懲役5年以下」になるケースも
── あおり運転が危険な運転を指すのはわかります。もう一歩踏み込んで、どのような運転行為が該当するのでしょうか?
鬼沢さん:
あおり運転の具体的な内容は、もともと法律では明確に規定されていませんでした。
2017年6月、高速道路上のあおり運転で起きた死亡事故が大きなニュースとなり、以降警察の取締りが強化され、さまざまな事例の発生とともに道路交通法の改正へとつながっていきました。
2020年6月30日施行の改正道路交通法では、あおり運転を厳しく処罰するために「妨害運転罪」を新設。該当する違反行為や罰則を明確に定めています。
以下があおり運転にあたる10の違反行為です。
・車間距離を極端に詰める
・正当な理由なくクラクションを鳴らす
・危険回避目的ではない急ブレーキ
・急な進路変更をして割り込み
・威圧目的の幅寄せや蛇行運転
・妨害目的のパッシングや継続的なハイビーム
・乱暴な追い越し
・対向車線からの接近や逆走
・高速道路上での駐停車
・高速道路上での低速走行
── あおり運転とみなされたら、どのような罰則を受けることになりますか?
鬼沢さん:
妨害運転罪の成立に対し、2つの罰則が定められています。
ひとつは、他の車両の通行を妨害する目的であおり運転をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
免許取り消しとなり、違反点数25点、欠格期間(免許取り消し処分後、免許を再取得できない期間)2年。
もうひとつは、あおり運転によって著しく交通の危険を生じさせた場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金。免許取り消しとなり、違反点数35点、欠格期間3年。
非常に重い罪なのがわかります。
加えて、あおり運転によって人を死傷させた場合には危険運転致死傷罪が成立(一定の行為により判断)し、負傷の場合で15年以下の懲役、死亡の場合で1年以上の有期懲役となり、厳罰に処されるのです。