「そのチャイルドシートだと交通違反になりますよ」。なんで?どうして?チャイルドシートの着用は法律で義務づけられていて、こまかいルールも存在します。意外と知られていない基準などについて、鬼沢健士弁護士に聞きました。
生まれてすぐに着用義務が発生する
── チャイルドシートをつける重要性はわかっていても、何歳から何歳まで必要なのかを把握できている人は少ないはずです。対象となる子どもの年齢はいくつなのでしょうか?
鬼沢さん:
0歳から6歳未満までの子どもが対象となります。
チャイルドシートは「乳児用」「幼児用」「学童用」の3つに区分されています。想定の体重、身長、年齢をもとに選び、子どもの成長にあわせて切り替えていきます。
たとえば乳児用の場合、「体重:13kg未満、身長:70cm以下、年齢:新生児~1歳ぐらい」というのが国土交通省の示す数値です。
法律上の名称は「幼児用補助装置」。道路交通法第73条第3項の3で着用義務が規定されています。
── 0歳から対象なら、子どもの誕生直後から義務ということですね。
鬼沢さん:
病院から赤ちゃんを家に連れて帰る車内でも必要です。マイカーを使う人は準備しておかなければならないわけです。
チャイルドシートは車に乗るお子さんの安全のために必要不可欠。未使用者の死亡重傷率は使用者の約2.1倍とされています(国土交通省調べ)。
着用が「免除される」ケースがある
── 乗車中はつねにチャイルドシートをつけていなければいけないのでしょうか?
鬼沢さん:
チャイルドシートを着用しなくていい場面がいくつかあります。
たとえば、病気やケガで療養上適当ではないとき、緊急性を伴うときなどです。授乳やおむつ替えのときも着用は免除となりますが、安全とはいえないので、停車して行うべきですね。
そのほか、タクシーに乗るときも着用は免除されます。チャイルドシート未装着の友人などの車に、「すぐ近くだから」と軽い気持ちで乗ってしまうケースが考えられますが、当然ながら違反なので、タクシーやバスを利用するようにしましょう。
── 違反した場合はどうなるのでしょうか?
鬼沢さん:
幼児用補助装置使用義務違反となります。違反点数1点、反則金はありません。罰金の有無に関わらず、違反は違反ですから、チャイルドシートの着用は絶対です。
「買ったはいいけど」法律違反になる商品もある
── チャイルドシートを購入する際は、どんな点に注意すればよいでしょうか?
鬼沢さん:
国土交通省ではチャイルドシートの安全基準を定めています。現行の安全基準をクリアした製品には「Eマーク」がつくので、該当のマークを確認して購入するようにしましょう。
現行の安全基準を満たしていないものだと、チャイルドシートの着用義務を守っていることにはなりません。
ちなみに、2012年6月30日以前に製造されたチャイルドシートには、法律改正前の古い安全基準をクリアしていることを示す「自マーク」がついています。旧基準ですから、こちらはNGとなります。
── 友人が使ったチャイルドシートを譲ってもらうときなどは気をつける必要がありますね。
鬼沢さん:
私事ですが、使用したチャイルドシートをリサイクルショップに持ち込んだら、買い取ってもらえなかった経験があります。理由は「製造年月が古く、違反となる」からでした。
ヤフーオークションやメルカリなどに並ぶチャイルドシートの場合、出品者がそういった知識を持っているとは限りません。購入する前に前述したマークの有無などを確認すべきでしょう。
── そういう意味では、中古よりも新品のほうが安心できそうです。
鬼沢さん:
現行の安全基準を満たしている点では、新品のほうが安心でしょう。
── 子どもの安全・安心にチャイルドシートは欠かせません。法的なルールを守り、家族で楽しいカーライフを過ごしたいと思います。
PROFILE 鬼沢健士さん
2009年、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。10年、司法試験合格。12年、茨城県弁護士会に登録し、取手市に「じょうばん法律事務所」を開設。交通事故、労働問題(被用者側)、インターネット詐欺を中心に取り扱う。
取材・文/百瀬康司 図版/アイル企画