「子どもと鶏や山羊をさばく」命の重みを伝えたい

── 元さんが出前授業で来てくれるなんて豪華ですね!奄美の文化を伝える役割も大切にされていますが、ご自身がお子さんに伝えたいのはどんなことでしょうか?

 

元さん:
しいていうと、“生命の重みや自然の厳しさ”ですね。私たちも生命をいただいて生きているということも。

 

私が育ったのは総勢50人ほどの小さな集落です。通っていた小学校は私を含めて児童が4人だけ(ちなみにそのうち3人は私たち三姉妹)。スーパーもありましたが、自分たちで鶏や山羊をさばくのが日常でした。

 

かわいがっていた山羊をおじいちゃんがさばくのを見て、最初は泣くこともありましたが、やがて「あの命が私の一部になるのだから、しっかりいただこう」という気持ちに。

 

ご自身を「明るい負けず嫌い」と評する元さん。取材中も笑いが絶えない

だから、子どもたちにも生き物をさばく経験をさせました。誰に言われるでもなく「これからは全部食べる」と言い出したので、子どもなりに理解してくれたのだと思います。

 

生命も自然もそんな簡単なものではない、と伝わったかなと思います。

 

店頭で切り身の魚やパックされた肉ばかり見ていては、生命の重みに気づかない。便利な世の中だからこそ、親として意識して伝えていきたいです。

 

PROFILE 元ちとせさん

鹿児島県奄美大島出身。2002年『ワダツミの木』でデビュー。アルバム『平和元年』で第57回日本レコード大賞「企画賞」受賞。今年、オリジナルとしては14年ぶりのニューアルバム『虹の麓』をリリース。2023年2月4日にEX THEATER ROPPONGIにて20周年記念ライブを開催する。 

 

取材・文/岡本聡子 撮影/伊藤智美 写真提供/株式会社オフィスオーガスタ