「中学生の息子がひどいこと言うから、頭にきて、それなら“育てないよ!”って言い返して。これが私の最終手段(笑)」。インタビューで笑いながら、息子さんとの話をする歌手の元ちとせさん。この話からも見えてくる親子の距離感。奄美大島で過ごす、子育てのいまを聞きました。
「ひとりの人間」として接するのが奄美の子育て
── 元さんは2009年に奄美に戻り、歌手としての活動と子育てをされています。子育ては奄美で、と考えていたのでしょうか?
元さん:
子育てのために戻るということではなかったのです。ただ、ばくぜんと「いつかは島に戻るんだろうな」と思っていて、その時期がたまたま子育てと重なりました。
「東京との行き来や育児のやりくりが大変でしょう」と言われますが、母や姉など、まわりの皆が手伝ってくれるのでそういう不安はありません。
長女は高校生になり、中学生の弟のことや家事を任せられるので頼りになります。
── 親族と協力して子育てできるのは安心ですね。お子さんは大きくなられましたが、これまで奄美で子育てして気づいたことは?
元さん:
奄美では、大人と子どもをわけ隔てなく接します。大人だからといばったり、相手が子どもだからと隠したりっていうことも少ないんじゃないかな。肩ひじ張らず、集落の皆で子育てするイメージです。
奄美の人はお酒が好きな人も多いのですが、飲んで酔った姿を隠す様子もなく、本来の自分の姿で子どもと接します。
私の出身地は奄美でも奥のほうなので、中心地の街とは異なるかもしれませんが、私が子どものころは毎日、夕方になると集落の真ん中にブルーシートを敷いて夕飯を持ち寄って、宴会するのがつねでした。
一緒に歌って踊って、そこで子どもが歌を覚えることも。
── 自然な姿で子どもといられるのはラクですね。でも、親として叱ったり、方向を示さなければならない場面もあると思います。お子さんと接するうえで心がけていることはありますか?
元さん:
難しいことは言いませんが、「ありがとう」「ごめんなさい」はちゃんと言う、を徹底しています。
けんかや言い合いになっても、必ずその場で終わらせて絶対に後にもちこさない。だって、けんかしたままお互い出かけて、何かあったら取り返しがつかないじゃないですか。
うちの母が逆のタイプだったので、私が子育てするときは「その場で解決するぞ」って決めていました。