子どもも楽しめる鑑賞中の声かけワードとは?

── そういえば、いままで作品近くに書いてある説明文も、かなりの時間をかけて全部読み込んでいました…。

 

Naomiさん:
美術館や博物館に来ると、「知識をつけて帰らなくては」と無意識に感じることがあるかもしれません。

 

でも勉強のように、堅苦しく捉える必要はありません。私は説明文より、まずは作品そのものを観て楽しんでいただきたいなと思っています。

 

作品の情報はネットで簡単に調べられますから。でも、目の前の作品の質感やまとっている雰囲気などは、その場でしか感じることができません。

 

作品を見て「なんか好き」「わー!きれい」「ちょっと気持ち悪い…」とか、なんでも良いんです。感じたことをぜひそのまま味わってみてください。

 

ちひろ美術館「ちひろのアトリエ」はちひろのアトリエを部屋ごと復元、人間・ちひろに出会える空間(撮影/大槻志穂)

その上で説明文を改めて読んでみると、「作品からは優しい印象を受けたけれど、当時の作家にはこれほど苦しい背景があったのか」など、新たな発見もあるかもしれません。

 

── 子どもにはどんな声かけをすれば、一緒に鑑賞を楽しめるでしょうか。

 

Naomiさん:
そこに描かれているものを観て感じたことを、お互い素直に言葉に出してみてはどうでしょうか。

 

たとえば食卓を描いた絵画なら「このごはん美味しそうだね。何を食べているのかな?」とか。風景画なら「ここに塗られた水色、きれいだね。今日のお空の色みたいだね」とか。

 

ほかにも人物がモチーフの彫刻作品なら、一緒に同じポーズをとってみるのも楽しいかもしれませんね。

 

── そうして、作品そのものを体感することに価値があるんですね。

                                                   

Naomiさん
そうなんです。自分が良いなあ、好きだなあ、と感じる作品をしっかり観る。そしてぜひ、驚いたり、ジーンとしたり、心揺さぶられる体験を、大人も子どももたくさんしてもらいたいです。それぞれの親子のペースで、のびのびとミュージアムを楽しんでみてくださいね。

 

PROFILE Naomiさん

アート、デザイン、工芸にまつわるインタビュアー・ライター・企画編集・ミュージアムコラムニスト。展覧会や作家紹介などを、自身のSNSやnote、Podcastなどで発信。

 

取材・文/木村和歌菜 画像提供/ちひろ博物館、千葉市美術館