吸放湿素材で部屋ごとの環境を改善
── 普段から掃除をしている場所でも、大掃除でやるべきことはありますか?
髙岡先生:
居室として使うところでは、北側の部屋は日当たりが悪いことから、ほかの方角と比べて湿度が高くなりやすく、ご家庭の調査ではダニが多く検出されます。
南側にリビングやダイニングがある間取りだと、子ども部屋などの個室や寝室として使われているケースが多く、ダニの温床となる寝具類もあります。普段から、北側の部屋は特に念入りに掃除したほうがいいですね。
また、方角に関係なくカーペットを敷いている部屋は、床とカーペットの隙間でダニが増えるので、できればカーペットなどの裏側や側面にも掃除機をかけてください。
昔は大掃除では「畳上げ」と言って、畳を外して天日干しする習慣があり、非常に有効なダニ対策になっていました。
住居の素材自体も木や土、紙といった湿度を適切に保つ天然の吸放湿素材が多く、ダニが増えにくい環境だったといえます。
── 木材のほか土の壁、襖や障子といった紙が機能していたということですか?
髙岡先生:
そうした天然素材は湿度が高い状態だと吸湿し、乾燥しすぎると湿気を放出して、室内を快適な湿度に保つ調湿作用があります。現代の住宅環境では、石油由来や化学物質で作られた調湿作用のないものが多く、密閉度が高いこともダニが増殖しやすい要因です。
さらに閉めきりになりやすく、掃除が行き届かない子ども部屋や高齢者の部屋などは、ダニが増える条件がいくつも重なります。
クローゼットや押し入れの対策でおすすめしていますが、炭や珪藻土などの吸放湿素材のアイテムは室内に置くタイプのものもあります。床や壁の素材を変えるのは大変ですが、そういった調湿効果のあるものを部屋の広さに応じて設置するのも、環境改善のひとつです。
── そのほかダニを増やさないために、環境を改善する方法はありますか?
髙岡先生:
大きなものからちょっとしたことまで、さまざまな改善方法はありますが、それぞれのご家庭のライフスタイルに合った、無理なく続けられる視点で考えることをおすすめします。
たとえば日常の掃除がしやすいように、家具の配置を見直してみるのもいいと思います。空気清浄機など、機械を上手く活用することでも環境を改善できます。
ダニが増えやすい環境の特徴を理解していれば、「普段は忙しくてもできることを続け、大掃除や時間のあるときはより丁寧に対策する」くらいのスタンスでも、ダニの増殖を極力抑える対策ができると思います。
PROFILE 髙岡正敏先生
医学博士、獣医師。埼玉県衛生研究所環境衛生部技術吏員などを歴任。50年以上のダニ研究を基に、アレルギー症状軽減のための調査・指導を行っている。著書に『お父さん、お母さんが知っておきたいダニとアレルギーの話』(あさ出版)ほか。
取材・文/鍬田美穂 写真提供・撮影/八木実枝子