日本人の約半数がかかっていると推定されるアレルギー疾患。主な原因のひとつとして挙げられるダニですが、目に見えないものだけに対策が難しい面もあります。50年以上ダニ研究を続け、アレルギー症状軽減のための調査・指導を行っている医学博士・髙岡正敏先生に、ダニアレルギーについて詳しくお話を聞きました(全3回中の1回)。
目に見えないからこそ「正しい知識」が大事
── 多くの人が悩まされているアレルギー疾患について、まず基本的なところから教えてください。
髙岡先生:
生物や異物が気管や肌・粘膜などから体に入った際、それを除去しようとする免疫反応によって起きる症状です。細菌やウイルスを排除しようとしたり、薬やワクチンで副反応が起きたりするのと同じ体の働きですが、体に害をおよぼす症状を示すのがアレルギー。
また、免疫反応は外から入ってきた「抗原」と、体の中にある「抗体」が結合して起きますが、アレルギーの原因となる「抗原」のことをアレルゲンと呼びます。
── さまざまなものが、アレルギーの原因になるといわれています。
髙岡先生:
アレルギーを起こすものは動物や植物のほか、薬、金属、化学物質など多岐にわたりますが、私たちの身の回りにあるものでは、ダニ、花粉、カビ、食品などが挙げられます。
ダニや花粉は、ほとんど目には見えません。しかし、実際には生活空間に多く存在しているため、ダニや花粉にアレルギーを持つ人の割合は非常に高く、ダニに関するアレルギー疾患は特に子どもに多いようです。
目に見えないものだからこそ正しい知識を持ち、それらの特性を理解したうえで適切に対応するのが大事だと思います。
ストレスなども発作や症状悪化の原因に
── ダニが引き起こすアレルギー症状には、どういったものがあるのでしょうか?
髙岡先生:
ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、目ではアレルギー性結膜炎、食品で増えたダニによるアナフィラキシーなどです。
ダニアレルギーと聞くと、「ダニを死滅させれば、解決するのでは?」と考える方がいます。でも、ダニは薬剤に強いうえ、熱で殺す場合55℃以上で30分以上加熱する必要があるため、そもそも死滅させるのはなかなか難しい。
しかも、ダニそのものだけでなく、ダニの糞や死骸もアレルギーの原因物質(アレルゲン)なので、ダニを殺すだけでは解決しないんです。
── ダニによるアレルギーの原因として、よくハウスダストが挙げられます。
髙岡先生:
室内のちりやほこりといったハウスダストには、ダニやダニの糞、死骸のほか、花粉などさまざまな物質が含まれています。
アレルギーのある人は、複数の物質にアレルギー症状を起こすケースが多いです。ダニに限らず、原因を特定したほうが有効な対策がしやすいと思いますし、「たいしたことない」と放置して重症化する可能性もありますから、きちんと検査してもらいたいですね。
また、アレルギーはアレルゲンによって起きるほか、症状を悪化させる要因「増悪要因」に誘引されることがあります。アレルギーの増悪要因はいろいろありますが、たとえば化学物質やストレス・不規則な生活といったことが、アレルギー発作のきっかけになります。
── 忙しくて疲れているときなどに症状が出やすいのは、そのためですか?
髙岡先生:
そうした状況だと丁寧に掃除をする時間がないなど、物理的な面でアレルギー対策ができていないせいもあると思います。ただ、無理して「やらなきゃ」とストレスになるのも、アレルギーにはよくありません。また、子どものアレルギー発症のなかには、親のストレスが影響したと思われるケースもあります。
ご家庭のライフスタイルに沿った形で、「できる範囲のことを継続的にやる」というのが重要だと考えています。