自然を慈しむことが生きている実感に

── Fairy's Dressさんは、一つひとつの言葉を慎重に選んで、丁寧に話されるのが印象的です。妖精のドレスで使う植物の組み合わせやデザインも、慎重に考えているのでしょうか? 

 

Fairy’s Dressさん:
創作活動を始めてから、庭の植物を眺めていると、自然とドレスのデザインを思いつくようになりました。

 

イメージに近づくように手を動かしていると「この植物も組み合わせてみよう」と、アイデアがどんどん膨らんで、想像以上のものに仕上がっていくのが楽しいです。

 

今、庭では50〜80種類の植物を育てています。自分好みの植物を少しずつ増やしてきましたが、新しい植物を選ぶ際は「既に庭にある植物が活きるかどうか」を大事にしています。

 

きのこのうえに置かれた、どんぐりのティーポットとティーカップ。妖精の休憩所をイメージした

── どの作品も草花の色や形が活かされていて、Fairy's Dressさんが自然を大切に思う気持ちが表れています。作品には、痛みかけて翌日には散ってしまいそうな状態の花を使っていると伺いました。自然への敬意のもとで、繊細な作品を生み出す難しさはどんなところにありますか?

 

Fairy’s Dressさん:
花びらはとても繊細で傷つきやすいので、作業には神経を使います。

 

生花の場合、すぐに色褪せてしまうので、スピードも求められますね。展示会には、すぐに色褪せないブリザーブドフラワーの作品も持っていきますが、どの作品も配送や梱包にはすごく気を遣います。少しぶつけただけでも、形が崩れてしまうので。

 

ほかにも、植物を種や苗から育てる難しさは、常に感じています。

 

私が住む鹿児島はもともと高温多湿で、その年の気候によってはうまく植物が芽吹かないこともあるんです。ただ、その難しさを感じているからこそ、植物が無事に育ってくれて、つやつやした葉を茂らせ、きれいなお花を咲かせてくれたときは、すごく嬉しいです。

 

庭を俯瞰して見たときに、植物や虫、土の中の微生物たちの自然の営みを感じられると、ほっとします。

 

太陽の下、木が生い茂り風になびくなか、草花がきれいに咲いて、生き物が元気に暮らしているのを目にすると、生きている実感がして、すごく安心するんです。

 

PROFILE Fairy’s Dressさん

鹿児島県出身、鹿児島県在住。小学6年生で起立性調節障害を発症し、中学校に進学するものの、一度も授業に出られず、高校進学を断念。2021年、うつの治療中に妖精のドレスを作り、SNSに投稿したところ大きな反響を得る。現在はSNSや展示会での作品公開や、作品販売をおこなう。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/Fairy’s Dress