フリーランスでも、毅然とした態度でNOと言う

──​ 会社員の場合は、『労働基準法』など労働時間に対して明確なガイドラインがありますが、フリーランスは、たとえ深夜でも依頼が来た場合はすぐに対応せざるを得ない場合も…。フリーランスの長時間労働はどのようにすれば回避できるでしょうか。

 

上谷さん:
フリーランスの場合は「朝9時から夕方17時まで」というような雇用形態ではないので残業代は発生しないことは理解していると思います。とはいえ、健全な労働環境を守ることは必要です。

 

難しい状況を強いられるようなことがあるなら、依頼主に「この時間帯は仕事ができません」などと交渉すべきです。たとえば納期があらかじめ決まっている仕事だったのに、急に前倒しするように言われたなら、「それは無理です」と伝えていいんですよ。

 

──​ フリーランスの場合は、こちらから交渉をすると仕事がなくなるのではないかという不安があり、言いづらい面もありますが…。

 

上谷さん:
無理な要求をしてくるクライアントとはつき合いをやめるか、それでも続けるか。それは、その人の仕事の選び方によると思うんですよね。とはいえ、時間帯などを考えずに「今すぐやってくれ」という会社は、どう考えても意識が低いと思います。

 

フリーランスに限らず育児中の女性の場合は、子育てを大事にしながら、体調にも気をつけて働きたいと考えている人もたくさんいらっしゃるはず。その場合は、最初に「このくらいのペースで仕事をしたい」と伝えるべきでしょう。

 

ある程度は自分の要望を伝えないと、企業側にも「いつでも仕事を頼める状況ではない」ってわかってもらえないですよね。無理をして体を壊してしまったり、子育てがおろそかになったりするのは本望じゃないでしょうし、会社もそんなことは望んでいないと思います。

 

──​ 社員の場合は、団結して労働組合などに相談するのが有効だとお聞きしましたが、横のつながりのないフリーランスはどうすればよいでしょうか。

 

上谷さん:
個人事業主向けの『フリーランス協会』というような団体に所属する方法もあります。入会金などの費用がかかる場合があるので、どのような団体があるのか調べて、居場所が見つかると、心強いと思います。フリーランスの地位を向上したいと思う仲間がみつかるかもしれません。

 

PROFILE 上谷さくらさん

弁護士(桜みらい法律事務所所属)。青山学院大学法学部を卒業し、毎日新聞社入社。 記者として甲府支局で事件取材などに携わった。新聞社を退社後、司法試験に合格。2007年に弁護士登録(第一東京弁護士会)。著書『暮らし・お金・老後… おひとりさまの心配ごと、すべて解決してください!法律と制度を味方につければ、1人でも自分を守れる!』(Gakken)など。

取材・文/池守りぜね イラスト/まゆか!