コロナ禍でリモートワークが定着し、通勤時間などを気にせず在宅で働けるようになりました。しかし、在宅の場合は業務時間と仕事外の時間があいまいになってしまう問題も。目に見えない形での長時間労働に対し、残業代が支給されない場合はどうすれば…?民事事件を始め、幅広い分野の案件に携わっている上谷さくら弁護士に話をお聞きしました。
リモートワークで公私の区別がつかず長時間労働
── コロナ禍になり、リモートワークと呼ばれる在宅勤務を取り入れる企業も増えてきました。しかし、企業側が労働時間の管理が難しいという問題や、働く側も仕事とプライベートの時間の切り分けがしづらいため、長時間労働になりやすいという悩みも聞きます。
上谷さん:
厚生労働省が『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』を策定しています。企業側も、テレワークにおける労務管理は非常に気をつけています。業務時間外は、パソコンにログインできないようにしている企業もあります。
『労働基準法』では、「時間外労働の限度に関する基準」が定められていて、時間外労働の上限は原則として⽉45時間まで、とされています。労働者に時間外や休日労働をさせる場合には、労働組合などと『36協定』と呼ばれる協定を締結する必要があります。
36協定を締結したからと言って、無制限に残業させられるわけではありません。例外をつくる場合にも、その範囲内で行うようにしなければならないんです。
── リモートワークの場合は、残業してもサービス残業扱いになるのでしょうか。
上谷さん:
リモートワークだからといって、残業代を支給しなくてよいという理由にはなりません。通常の企業であれば、リモートワークでも残業は法律の範囲内におさめる取り組みをしているはずです。
── リモートワークでも、残業をした場合は申請をすべきなのでしょうか。
上谷さん:
リモートワークでも会社が残業の実態を把握できる体制をつくらなきゃならない。会社が気づいていないのなら、きちんと伝えましょう。
── 労働時間や働き方に対する問題は、会社に言いづらいと思います。どのように伝えればスムーズでしょうか。
上谷さん:
残業は、会社に対して正々堂々と話していいことです。ただ、それを言いづらい場合、メールでもいいのですが、言い方によっては誤解を招く恐れがあるので、電話してみたらいかがでしょうか。人事担当者などに「ちょっとご相談なんですけど…」という感じで頼ってみるのもひとつの方法かなと思います。
── リモートワークでの長時間労働は、企業側も問題としているのでしょうか。
上谷さん:
今、企業にとっても労働管理は非常に重要な課題と捉えられていて、人事はものすごくピリピリしているはず。大企業になると、就業時間を1分でも過ぎると強制的にオフィスの電気を消灯したり、パソコンがつながらないようにしたりする例もありますから。
会社が社員の勤務時間の管理ができていないっていうこと自体が問題ですし、会社がそれに気づいてないのなら、きちんと指摘すべきです。
リモートワークで不当な残業が横行しているのであれば、社員で結束して団体で交渉することも大切です。