女性は、結婚や出産などのライフステージに合わせて正社員から契約社員、派遣社員など雇用形態を変更することがあります。しかし、契約書や就業規則などをきちんと確認せずに働き始めた結果、「こんなはずじゃなかった…」という事態に陥ることも。今回は、自分自身が納得して気持ちよく働くために確認すべきポイントを、上谷さくら弁護士にお聞きしました。
気になることがあれば、専門家や労働組合に相談
── 育児や身内の介護などのために、正社員から雇用形態を切り替えて、契約社員や派遣社員を選ぶ女性もいます。しかし、業務内容は正社員と変わらないのに、賞与や退職金がないというように、処遇の違いに不満を抱く人が少なくないようです。
上谷さん:
同じ職場で働く人同士の待遇が違う、という状況は意外と多いもの。契約社員や派遣社員が、同じ業務を担当する正社員にモヤモヤした気持ちを抱えてしまうのはよく理解できます。でも、会社組織の視点で見ると、正社員と契約社員では業務内容が異なっている場合も少なくありません。
── 正社員と契約社員には、法律上で違いがあるのでしょうか。
上谷さん:
「正社員」と「契約社員」は法律用語ではありませんが、一般的には正社員は雇用契約に期間の定めがない「無期雇用」、契約社員は期間の定めのある「有期雇用」である場合をいいます。正社員と契約社員では、期間の定めの有無だけでなく、賞与の有無や退職金の有無が異なる場合が多いです。
──『同一労働同一賃金』という言葉を目にしますが、具体的にはどのような施策なのでしょうか。
上谷さん:
2021年4月1日より施行された『パートタイム・有期雇用労働法』や、『労働者派遣法』では、同一労働同一賃金を提示しています。これは正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者やパートタイム労働者、派遣労働者)とのあいだに生ずる不合理な待遇差の解消を目指すものです。
ただ、派遣や契約社員の方が「正社員と同じ業務を行っている」と思っていたとしても、業務に対する責任の重さや、部署の異動や転勤の有無など、条件が違うことは少なくありません。その場合に、正社員と契約社員とで待遇についてある程度の差がつくのはやむを得ないことです。その格差が不合理かどうかという部分が、判断すべきところなんです。
── もし契約社員の人が、正社員と同程度に働いているのに給与や休暇などの点で納得がいかない場合は、どこに相談すればいいのでしょうか。
上谷さん:
労働問題に詳しい弁護士や社労士などの専門家、労働組合に話を聞いてもらうのが良いと思います。無料相談などを利用すれば敷居が低くなるかもしれません。
被雇用者にとっては、同一労働同一賃金の原則が施行されたことが大きいです。厚労省の『同一労働同一賃金ガイドライン』には、いろいろな具体例が載っているので、参考にしてみてください。
企業のなかには、契約社員にも退職金を支払っている例もあります。そこは被雇用者側が、きちんと見極める必要があります。契約書や就業規則等に明記されているはずなので、労働契約書や自分が働く企業の就業規則は確認しておきましょう。